河村容治のインテリアコラム 今から学ぶ、インテリアコーディネート・トレーニング

第35回 リフォームの実例 KS邸(4)竣工

リフォームの結果、施主に大変喜んでもらえました。「もっとはやく工事をしておけばよかった。毎日、気持のよいお風呂に入れるのが幸せ」と言ってもらえたのは何よりです。
色彩は施主の要望で明るく清潔な感じにまとめました。白を基調に、壁紙は淡いグレーとし、アクセントとして手すりにビビットな赤を使いました。

リフォーム前とリフォーム後の間取り図

ランドリースペース廻り

  • 洗濯機は、洗面や浴室に置かれることが多いですが、家事の導線から考えると、キッチンの延長線上にあると便利です。

    そこで、使われなくなった勝手口をつぶして、食堂と同じレベルに床を張り、キッチン流しのとなりに、ランドリースペースを作りました。

    ドアは既存部分と同じサイズの窓に変え、吊り戸棚も同様に追加しました。ただし、手前にスペースがないので開き戸ではなく引戸にしました。
  • ランドリースペース

    ランドリースペース


水廻への入り口

  • 施主が高齢であることを考慮して、楽に開けられるように引戸としました。床は段差のないV型レールを使用し、車いすが通れるように十分な開口幅を確保しました。

    写真は、左がランドリースペースで、食堂側からドアが開いた状況です。左側に洗面が見えます。右側上部に洗面とトイレを分けることができるように設置したカーテンレールが見えます。
  • ドア(引戸)

    ドア(引戸)


洗面室

  • ドアを開けるとすぐに洗面器があり、その奥にトイレ・浴室がありますが、カーテンで仕切ることができます。洗面の高さは、施主の体型に合わせてベストなものを選んでいます。

    洗面器は、通行の邪魔にならないように浴室の壁面より出っ張らないようにし、また洗面器の後ろに洗面動作に十分なスペースを確保しています。

    洗面とトイレの床は電気による床暖房を設置。
  • 洗面

    洗面


トイレ

  • 脱衣スペースを兼ね、便器の上に脱いだ衣類を置きます。浴室のドアを3本引きとし、全開すれば、便器の横に介護スペースができるよう工夫しています。

    窓の下枠が飾り棚の役割を兼ね、花などが飾られます。
    トイレから洗面まで一本でつながる手すりの高さは、実際に施主に実験してもらい、適切な高さに設置しました。

  • トイレ

    トイレ

  • 手すり

    手すり


浴室

  • 高齢者仕様のユニットバス。
    トイレとは床に段差がなく、水栓金具は高齢者にも操作が簡単にできるように工夫されています。 浴槽の底は2段の深さがあり、半身浴も可能です。

    窓は低い位置に浴槽幅一杯に取り、中央FIXで左右に幅の狭いジャロジーにしています。予想以上に日中は明るく通風もよく、足も伸ばせて、気持ちよく入浴ができます。

  • 3本引きの戸

    3本引きの戸

  • 高齢者仕様の水洗金具

    高齢者仕様の水洗金具

  • 低い位置にあるジャロジー窓

    低い位置にあるジャロジー窓


玄関壁

  • 機能上玄関を結ぶ導線が不要になったので、ドアをつぶして壁にしました。そのとき、ドアは撤去しましたが、枠までとると他への影響が大きくなるので、枠を残しました。

    したがって、壁と同じ色に塗装しましたが、写真のように枠のラインが見えます。しかし、壁に額をかけるとほとんど気にならなくなりました。

  • ドアを撤去した壁

    ドアを撤去した壁

  • 絵画をかけてカモフラージュ

    絵画をかけてカモフラージュ

作者プロフィール

河村容治(かわむらようじ)

元東京都市大学 都市生活学部教授 博士(美術)、一級建築士、日本インテリア学会理事 CAD/CGによるインテリアデザイン教育に力を注ぐ

主な著書

「インテリアデザイナーNeoによる 一歩先行くインテリアプレゼンテーションテクニック」(共著・メガソフト)/「3DマイホームデザイナーPROで学ぶインテリアコーディネートトレーニングブック」(BNN)/「3Dインテリアデザイナーによるインテリアコーディネート入門」(技術評論社)など多数

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