富田商事写真
第6章

パートナーとの協働が生んだ成功

移転のプロが見つめたプロジェクト

新オフィス稼働開始まで伴走したパートナーに聞く

当初予定から2ヶ月も予定を前倒し、限られた予算内で理想的なオフィス環境を実現できたのは、移転委員会を中心としたメガソフトの熱意と工夫だけでは成り立ちません。信頼できるパートナーの伴走があったからこそでした。今回、この移転プロジェクトを支えた富田商事株式会社の営業担当、設計担当のお二人に、専門業者の視点からプロジェクトを振り返っていただきました。短期間という制約の中、どのようにして成果を生み出したのでしょうか。どのようにオフィス移転のプロとコミュニケーションをとるのがよいか、今後オフィス移転を検討する企業には必読の内容です。

インタビュー参加者

  • 富田商事株式会社 営業本部 小寺 芳明さん
  • 富田商事株式会社 企画・デザイン部 進藤 誠朗さん

ワンストップで理想的なオフィス移転を実現する専門会社

――貴社の事業概要をご紹介いただけますか。

小寺さん(以下、敬称略):
弊社、富田商事株式会社は創業100年超の歴史があり、現在の業態であるオフィス関連事業に参入してから約65年になります。弊社はマルチベンダーとして、特定のメーカーにこだわらず、各種メーカーの商品を幅広く取り扱えることが大きな特徴です。

また、施工から現場管理まで一括で対応できる点も強みだと考えています。オフィス家具の選定や提案はもちろんのこと

  •  ● 内装工事
  •  ● 電気・通信インフラ
  •  ● 引越し

までワンストップ対応することで、お客様が安心してオフィス移転を完了できるようにサポートしています。もちろん魅力的かつ快適なオフィス空間の提案も強みだと思っています。

小寺さん_1
営業担当・小寺 芳明さん

――メガソフトとはすでに5~6年のお付き合いをいただいていますね。

小寺:
弊社ももとから3D技術に高い関心がありました。メガソフトさんの3Dオフィスデザイナーにも自然と興味を持ち、展示会などでお話をさせていただいたことなどから、親しくさせていただくようになりました。

弊社も3Dオフィスデザイナーを日常の業務で使用していますし、360度3Dスキャナー(Matterport= 第3章で紹介)など、3Dを活用した提案手法の開発に力を入れています。今回、東京オフィスを移転すると声をかけていただいたときも、最新の技術を駆使してぜひお手伝いしたいと、早くから社内は盛り上がっていました。

3Dオフィスデザイナーがプロジェクト開始時から活躍

――移転プロジェクトの相談を受けた時点では、どんな印象でしたか?

小寺:
最初にお話をお聞きした時は驚きました。通常のオフィス移転に必要な時間よりかなり短く半年強で移転を完了させたいという話で、さらに途中で移転時期を繰り上げるというご相談もありました。チャレンジングなプロジェクトだと感じましたが、移転委員会の皆様の熱量の高さにも驚かされ、この並々ならぬ本気度がある方たちなら、スケジュール面の課題をクリアできるのではないかと感じました。

進藤さん(以下、敬称略):
最初の打ち合わせの段階で、すでに自社で詳細なレイアウト案を作成されていましたね。通常、クライアントから提供を受ける情報は、座席数や会議室の部屋数といった基本的な要件だけで、レイアウトは当社が1から検討することがほとんどです。しかも3Dオフィスデザイナーで作成した精密なレベルの図面だったので、最初から打ち合わせがスムーズに進みました。これは非常に珍しいケースで、その後の作業効率に大きな影響を与えることになりました。

進藤さん_1
設計担当・進藤 誠朗さん

――3Dオフィスデザイナーを使うメリットを具体的にお聞かせいただけますか?

小寺:
コミュニケーションの齟齬が生まれにくくなること、そして打ち合わせと打ち合わせの間のタイムラグがなくなること。この2点が本プロジェクトの成功につながった大きな要因だと思います。メガソフトさんと弊社が同じ3Dオフィスデザイナーを使うことで、レイアウトのファイルを授受して、そのまま読み込み、リアルタイムで修正・調整を行うことができました。

通常は、

  • → お客様の要望をお聞きする
  • → 社内に持ち帰って情報共有
  • → CADで図面を修正・作成
  • → 再提案

という流れです。もちろん、さらにご要望があればこのサイクルをやり直す流れになります。1サイクルで1〜2週間程度かかることも珍しくありません。しかし今回は、最短で1日、平均でも3日程度で修正案を提示できました。通常の3倍以上のスピードだったと言えると思います。

進藤:
「この棚をもう少し右に動かして」や「色をややダークトーンにしたい」といった細かな調整を言葉で行うのは難しいものです。しかし、画像で確認しながら進められれば、修正の回数そのものも減らせます。メガソフトのみなさんは、3Dオフィスデザイナーを介したスムーズなやりとりを「共通言語」と表現していましたが、その通りだと思います。

3D図面の効果を特に感じたのは、窓からの眺めを確認した時です。新オフィスの魅力のひとつである眺望を確保するために、細かなレイアウト調整を行いました。平面図や立面図だけでは、お客様が完成イメージをもつのは困難ですが、3Dにより実際の目線の高さから確認していただきました。「机がこの高さでも景観の妨げにならない」「ここの部分のパーテーションは透明素材のものにしよう」といった判断を即座にしていただけました。

――普段の業務でも3Dオフィスデザイナーを活用していますか?

進藤:
非常に重宝しています。通常のパースだと、発注してから完成まで時間と費用がかかります。3Dオフィスデザイナーは、高速でパースを出せるので、お客様からも喜ばれますね。

360度3Dスキャナーによる現場調査革命

――今回、360度3Dスキャナーの活用も提案されたとお聞きしました。

小寺:
そうです。360度3Dスキャナーは、専用の360度カメラで建物や空間を撮影し、3Dデジタルデータとして活用できるプラットフォームです。今回、新旧のオフィスともに、このシステムで撮影しました。

ワンフロアのオフィスなら撮影時間は、わずか30分程度で完了します。撮影したデータをもとに、画面上で寸法も正確に把握できる3Dデータとして処理されるため、現地確認が最小限で済むというメリットがあります。

進藤:
設計担当から見ると画期的なことです。細かな寸法を測ったり、コンセントの位置を確認したりするだけでも、下見作業が必須でした。今回は居抜き入居のため、既設設備の正確な把握が重要でしたが、360度3Dスキャナーによって省力化できました。

360度3Dスキャナー
建築空間を簡単にデジタル化する360度3Dスキャナー。
富田商事は3D技術によるDXを推進中。

下見の回数が増えれば、現地の行き来だけでも時間的なロスは膨らみます。設計担当にとってパソコンの前から離れず、詳細な検討を行えることで業務効率がかなりアップしました。

小寺:
もう1つ強調したい点は、360度3Dスキャナーで取得したデータが3Dオフィスデザイナーに直接取り込めることです。まず現況を正確に再現しながら、新しいレイアウトを検討できるため、より精度の高い提案や検討が可能になります。今後は一層多くのお客様にこの便利さを体験していただきたいと思います。

提案書
富田商事様がメガソフトのために作成した提案書

2ヶ月前倒しという難題を実現するために

――プロジェクトが始まってから、移転時期を8月から6月へ前倒ししたいと相談された時の気持ちをお聞かせください。

小寺:
ただでさえスピード感が求められていたので「さらに2ヶ月」とお聞きした時は、間に合うか不安に思ったのは事実です。しかし、内装工事や引っ越し作業など移転完了までの工程で少しずつ短縮すれば、実現できるかもしれないと考えました。

ビル側が行うB工事だけは、ビルオーナーや管理会社によって業者が指定されていたため、弊社は直接コントロールできません。しかし結果的には、B工事とテナント側が行うC工事を同時並行で進められるようになりました。これはB工事の業者さんも同じゴールに向かって協力してくれた賜物だったと思います。

進藤:
特に通常1〜2ヶ月かかる家具選定を半月にまで圧縮する必要がありました。膨大な選択肢の中から、お客様が求めるコンセプトに合う製品を絞り込み、集中的に提案と決定を繰り返しました。ここでも、最も理想に近いと思われるものをこちらから提案し、フィードバックをいただいてから、再度選定するという方法で効率化を図りました。迷う時間を短くし、スピーディに決断していただくサポートができたのではないかと思います。

メガソフトの強力な推進力と熱意を感じていた

――メガソフトの動きはどのように見えましたか?

小寺:
移転委員会の皆様がもつ推進力には目を見張るものがありました。週1回のペースで打ち合わせを行い、毎回明確な方向性と迅速な意思決定をいただくことができましたが、実はこれも非常に珍しいことです。

通常のオフィス移転プロジェクトは、決定権者が不明確だったり、社内調整に時間がかかったりして、なかなか前に進まないケースも少なくありません。しかし今回は、移転委員会のメンバーの方々がその場で実質的な決定を下すことができました。

進藤:
メールでのやり取りも非常に迅速で、こちらからお送りした質問や提案に対して、すぐにレスポンスをいただけました。やはり移転委員会の熱意があったからこそ、私たちも食らいついていったという側面もあったかと思います。

富田商事様

また、メガソフトさんの準備も印象的で、十分に議論を重ねた上で打ち合わせに臨まれるため、要望が明確で、かつ統一されていました。「こういうものが欲しい」という具体的なイメージを既にお持ちで、さらにご自分たちでも情報収集をされていました。

家具選定においても、1つのアイテムに対し深く検討を重ねられました。ミッドセンチュリーモダンというコンセプトを貫くため、色調や素材感まで細かく吟味し、統一感のある空間づくりを実現されました。ここまで細部にこだわりを持ったお客様は珍しいです。

完成したオフィスへの評価と今後への期待

――今回のプロジェクトを通じて、今後の展望をお聞かせください。

小寺:
以前からメガソフトの守田部長とは、360度3Dスキャナーを使った3Dオフィスデザイナーとの協業の話を幾度となくしていましたので、今回実際の形として実現できて良かったと感じています。今後は、3Dオフィスデザイナーや360度3Dスキャナーを活用した提案手法の開発に力を入れるとともに、メガソフト様との協働により業界全体のスタンダード向上に貢献していきたいと考えています。

現在、東京都の補助事業を活用して、このような3D技術を使ったオフィスレイアウトサービスを多くの企業に紹介する取り組みを行っています。今回のメガソフトさんのプロジェクトは、そのモデルケースとしても大きな意味があります。

進藤:
3Dのすごさを再認識しました。今後の設計業務における3D技術の可能性に期待を寄せています。お客様とのコミュニケーションが劇的に改善され、より良い提案ができるようになりました。今後もこの技術を磨いて、お客様に満足していただける空間づくりを続けていきたいと思います。どんな状況でも、お客様のイメージの高さに合わせて提案していけるような対応力を身につけたいですね。

――最後に、これから移転を検討する企業へのメッセージをお願いします。

小寺:
オフィス移転では、ご担当者に非常に大きな負担がかかります。皆様普段の仕事がそれぞれある中で、プラスして時間を割くことになります。

弊社のような専門業者は、ワンストップで移転まで一気通貫してお任せいただけるため、ご担当者の負荷軽減につながります。何から手をつければいいか、どこを相談すればいいかわからないというお客様も多くいらっしゃるので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

進藤:
今回学んだことは、お客様との密なコミュニケーションの重要性です。特に短期間のプロジェクトでは、お互いの理解度を常に確認しながら進める必要があります。

3Dオフィスデザイナーのような共通言語があることで、視覚的に情報を共有でき、誤解や行き違いを防いで効率的な意思決定が可能になります。これは今後のプロジェクトでも積極的に活用していきたいツールです。

富田商事様のホームページにも当記事が掲載されています。
オフィス移転に関する相談、お問い合わせは同社へご連絡ください。

富田商事様
3Dオフィスデザイナーのスクリーンショット

3Dオフィスデザイナー

本プロジェクトで活用した自社製品「3Dオフィスデザイナー」は、オフィスレイアウトを簡単に3D化できるソフトウェアです。VRでの体験機能や実寸表示により、オフィス移転前に空間を体感することができます。

  • 素早いレイアウト作成
  • VR体験機能
  • 豊富な家具ライブラリ
  • 実寸表示と空間検証