オフィス移転の様子
第1章

急きょ決まった移転方針と
タイムリミット

手狭になったオフィス、迫られる決断

東京オフィス設置の背景

メガソフト株式会社の設立は、1984年。創業の地は大阪で、現在も大阪・梅田に本社を置いています。事業拡大とともに、1993年に東京オフィスを設置しました。2018年3月から2025年5月末まで入居していた北の丸グラスゲートビル(以下、旧オフィス)に移った当時、東京オフィスに席を置く社員は10名で、余裕をもった設計でした。

手狭になったオフィス、迫られる決断

しかし、今回の移転直前の時点における社員数は20名と倍増し、座席不足、スペース不足が慢性的な課題となっていました。

「旧オフィスでは、社員全員が出社した際に座席が足りず、しかもその状況が3年続いていました」と、組織横断型で結成された移転委員会のメンバーは振り返ります。

フリーアドレス席は2席しかなく、在宅勤務をする割合が多い開発部メンバーが出社したときには特に座席の調整に苦労する状況でした。複数のオンライン商談が重なると場所の確保が難しく、バーカウンター(休憩スペース)や作業台を急きょ使用するなど、場所探しに苦労していた社員も少なくありません。

特にコロナ禍を経たことで、以前は客先を直接訪問するのが当たり前だった営業担当も社内でオンラインでの商談に勤しむ時間が増えたことが、スペース不足に拍車をかけました。さらに手狭なスペースで複数のオンライン会議が進行すると、相手には隣席での会話が聴こえてしまいます。商談の質の低下にもつながる問題となっていました。

これ以上、問題を放置してはならないと役員会では移転を決定。2025年1月、営業・開発・総務と各部門から選抜された移転委員会が発足し、移転プロジェクトが本格的にスタートしたのです。

経営陣からの依頼は、8月の決算前の移転の実現。すなわち通常であれば、オフィス移転の計画から実行まで1年はかかるところ、残された時間は半年強しかありませんでした。

旧オフィスの様子_1
社員数の倍増により座席不足が深刻な問題となっていました


旧オフィスの様子_2
コロナ禍によりオンライン商談が増え、遮音性の低さが問題に
スケジュール
オフィス移転は最低でも1年以上かかるのが一般的

現状オフィスの評価と社員の声——要件定義のための準備

限られた時間の中、移転委員会はただちに活動をスタート。最初に取り組んだのは、社員全体へのアンケート調査でした。リモートワークが定着しているメガソフトでは社員によって出社する頻度もまちまちです。個人別の出社状況も踏まえつつ、旧オフィスの満足点と改善すべき点、新オフィスへの要望などを聞き取りました。

旧オフィスの満足点

アンケートで明らかになった、旧オフィスの良い点を紹介します。

<立地>

  • 交通の便:地下鉄3線が通る九段下駅から徒歩3分圏内というアクセスの良さ
  • 周辺環境:飲食店が多く、ランチや休憩に困らないこと

<オフィス設備>

  • 高速インターネット回線でストレスなく作業できる
  • 自慢のバーカウンターや大型ホワイトボードの存在。
  • 同一フロアのため、社員間のコミュニケーションがとりやすい

旧オフィスの不満だった点

一方で、不満点として指摘されたポイントは主に次の通りです。

  • オフィスが狭く執務スペースに全員分の席がない
  • 遮音スペースが少なく、プライバシーの確保が難しい
  • 慢性的な会議室と商談スペースの不足
  • 休憩スペースが通路動線上にあり、人が行き交うために落ち着かない
  • 収納場所の不足。特に展示会の備品などが発生する時期に困る

また、空調など設備の老朽化に関する不満もあり、より快適なオフィス環境を求める声が多いことが明らかになりました。

旧オフィスの様子_3
旧オフィスの3D鳥瞰図


旧オフィスの様子_4
休憩スペースのはずが、通路を人が行き交うため落ち着きづらい

新オフィスへの要望

来客時にバーチャルリアリティの体験をしてもらう「VRルーム」と「バーカウンター」は残してほしいという声が多く、利用頻度の低いセミナールームは廃止し、必要時のみ近隣の貸し会議室を使うといったアイデアも寄せられました。

旧オフィスでは20人以上が会議に参加できるセミナースペースを4人前後で使う場面が多く見られ、スペース的な無駄にもなっていました。

したがって、もう少しサイズの小さい会議室を複数作ることや、パーテーションで必要に応じて小型に区切って使うほうが効率的という意見も出されました。

新オフィスに必要とされた設備や改善点をまとめると次のようになります。

  • プライバシーが確保され、集中できるワークスペース
  • 小型でも十分な数の会議・オンライン商談スペース
  • 快適でリフレッシュできる休憩スペース
  • 収納スペースの確保(資料や私物を収納できるスペース)
  • 衛生的な環境(ゴミ箱の設置、清潔な休憩スペース)
新オフィスへの要望_1   
バーカウンター
新オフィスへの要望_2   
VRルーム
要件定義をもとに「3Dオフィスデザイナー」を用いて必要面積を算出したところ、旧オフィスと同程度の240平米が必要だと分かりました。旧オフィスは、特殊形状のため、同面積でも一般的なオフィスのほうが利用効率はよくなると推測されました。
3Dオフィスデザイナーによる計画
3Dオフィスデザイナーを活用した必要面積の算出

売り手市場の厳しい市況、物件選定の難しさ

要件は定まったものの、東京オフィス市場は厳しい売り手市場にありました。

「都心5区全体で空室率が4%台、特に旧オフィスのあった千代田区は2%台まで下がっていました。これは、選択肢が極めて乏しいことを表す水準です。さらに空室率が低下するほど、賃料は上昇傾向にあります」と移転委員会は分析。旧オフィスは、やや特殊な形状のため賃料が割安になるという事情がありましたが、同等スペックの物件を選んだとしてもかなり高騰していることが見込まれる状況でした。

こうした厳しい状況の中、移転委員会は大手やオフィス仲介に強い専門業者など3社の不動産会社にコンペ形式で物件探しを依頼しました。3社から集まった候補の物件は、実に66件にものぼります。

できれば千代田区内で最寄り駅から徒歩7分以内、坪単価3万円程度という条件で絞り込み、移転委員会による書類選考を通過した5件の内見をすることにしました。

建物全体のセキュリティ体制、エレベーターの台数やトイレや給湯室といった共用部の充実度、窓の大きさや採光面、さらにエントランスの印象など書類上では判断できない点も含めて、移転委員会では丁寧な内見スケジュールを組みました。

内見のポイント

内見のポイントとして、チェックリストにまとめた項目は以下の通りです。

  • 最寄り駅からの実際の歩行時間と経路の安全性
  • 飲食店、コンビニ、郵便局などの所在
  • エアコンや電気容量などビル設備の状態確認
  • フロアの形状と使い勝手
  • 自然光の入り方と景観
  • 騒音レベル
物件下見の様子_1
物件内見には十分な時間をかけて検討


物件下見の様子_2
不動産会社より提案された物件資料のイメージ
「物件選びは単なる面積や賃料の比較だけで行うべきではありません。働く環境としての質も重要です。社員のモチベーションや生産性に直結する要素も考慮する必要があります」
― 移転委員会メンバー

運命の出会い「ここに移転できれば皆がハッピーだ」

移転委員会が最初に内見した物件が、PMO平河町でした。その後、2件目を下見する時点では「PMO平河町が間違いなく理想的な物件」だと、移転委員会メンバーの間で半ば結論づけられるほどの内容でした。

最寄りの東京メトロ・永田町駅からの距離は「雨でも傘が不要なほど近く、駅から徒歩30秒」と説明され、利便性の高さは明らかでした。

カーテンウォールの外観が特徴的なPMO平河町は、「プレミアム・ミッドサイズ・オフィス」というコンセプトを体現していました。PMOは中規模ながら、それ以上に規模の大きなビルと同等の機能性と快適性、デザイン性を併せ持つオフィスビルとして高く評価されています。

窓からの景観も素晴らしく、最寄り駅や周辺環境も良好で、立地条件は理想的でした」と移転委員会は、社内に報告しています。立地条件については、永田町駅の他に赤坂見附駅も徒歩圏内で、複数路線が利用できる点も高く評価されました。

その後、他の物件の内見も進めましたが、常に比較されるのは最初に見たPMO平河町の絶対的な好印象だったと言います。「通常の物件見学時間は20分程度でしたが、PMO平河町では1時間以上かけて詳細に見学しました。」との移転委員会の証言からも、いかに運命的な出会いだったかをうかがい知ることができます。

新オフィスがとりわけ高く評価されたポイント

  • 外観・エントランスの高級感と清潔感
  • セキュリティの充実度(入退室管理システム)
  • トイレや共用部の美しさと機能性
  • エレベーターの待ち時間の短さ
  • 窓の大きさと眺望の良さ
  • フロア形状の使いやすさ
  • 提携スポーツジム、シェアオフィスの利用が可能

オフィス選びでは数値化できない感覚的な要素も重要であり、社員が『ここで働きたい』と思えるか、訪問するお客様にどのような印象を与えるかといった点を移転委員会は重視したのです。

他の物件にも優れたポイントはありましたが、総合的にPMO平河町を超える評価は現れませんでした。

PMO平河町外観
最初に内見を行ったPMO平河町の外観

面積のジレンマと条件交渉

しかし、新オフィスの入るPMO平河町にも明確な課題がありました。それは約63坪(約207平米)という面積が、当初試算した必要面積240平米より約2割小さいだけでなく、さらに現在のオフィス(約72坪)より狭いことでした。

それでも立地や設備の良さ、さらに社員が誇りをもって働ける環境を考慮すると、移転委員会は覚悟を決めて、当初計画の見直しやレイアウトの最適化などを進行しました。

さらには不動産会社との交渉により、以下のような好条件を引き出すことができました。

  • 坪単価の引き下げ
  • 相当期間のフリーレント期間の確保
  • 工事費用の削減

これにより、当初の予算上限を大きく下回ります。「面積は小さくても、レイアウトを工夫することで必要なスペースを確保できる可能性があります。また、この物件の立地の良さと設備の質の高さは他に類を見ないものです」と移転委員会は評価しました。

条件交渉の様子
条件交渉により魅力的なオファーを引き出すことに成功

最終決定と次なる課題

移転委員会は全会一致で第一候補を選定したうえで、「限られた予算内で、社員が働きやすく、お客様にも良い印象を与えられるオフィスを見つけることができた」と、以下5項目の内容で経営陣へ報告した結果、正式に契約へと進むことが決定しました。

  1. 賃料総額と物件品質のバランスが最適:立地・ビルクオリティと賃料のバランスが良く、コストパフォーマンスが高い
  2. 立地の優位性:永田町駅直結、複数路線利用可能で来客の利便性が高い
  3. ビル設備の質:築浅で設備が充実、セキュリティも万全
  4. 企業イメージの向上:外観や共用部の印象が良く、顧客へのイメージアップにつながる
  5. 交渉の成果:フリーレント、賃料値下げ、工事費削減など好条件を引き出せた

しかし、当初計画より狭い条件のためレイアウトの課題は残ったままです。面積の制約がある中で、いかに効率的に社員の座席や必要なスペースを確保するか。これは解決しなければならない重要なテーマでした。

スペースの使い方を根本から見直す必要があり、不要物の整理も重要な検討事項です。

おさらい

最短のステップとして、必要な内容

  1. 3Dオフィスデザイナーを活用したレイアウトの検討
  2. 収納方法の見直しと最適化
  3. 家具・什器の選定と調達計画
  4. 工事業者との打ち合わせと見積もり取得
  5. 移転スケジュールの詳細策定

物件選定までは完了しましたが、実際の移転に向けてはさらに多くの課題があります。限られたスペースを最大限に活かすための知恵と工夫が求められました。

メガソフトの移転プロジェクト、第2章へ続きます。

3Dオフィスデザイナーのスクリーンショット

3Dオフィスデザイナー

本プロジェクトで活用した自社製品「3Dオフィスデザイナー」は、オフィスレイアウトを簡単に3D化できるソフトウェアです。VRでの体験機能や実寸表示により、オフィス移転前に空間を体感することができます。

  • 素早いレイアウト作成
  • VR体験機能
  • 豊富な家具ライブラリ
  • 実寸表示と空間検証