エントランスホール画像
第4章

2025年6月2日、
新オフィス稼働

入念な最終チェックと「当事者」としての主体性

前章まで

着実に進んできたメガソフトの東京オフィス移転プロジェクト。オフィスのコンセプトをしっかりと定め、3Dオフィスデザイナーを活用することで内装を行う施工業者との意思疎通もスピーディに行えました。施工・工事会社の協力により、当初予定よりさらに2ヶ月も入居を早めることに成功したものの、実行段階では予測できなかった細かな課題が次々と浮上しました。無事に移転当日を迎えることができるのか、重要な局面を迎えていました。

移転に関する専門知識はどこまで必要か

移転が具体化するにつれて、メガソフト東京オフィスのメンバーで構成される移転委員会が直面したのは専門用語や業界知識の壁でした。ネットワーク回線の敷設に関しての責任範囲について知っている方は、一般企業には少ないことでしょう。

通信回線を例にとると

  • 建物の外からビルまで…NTT
  • ビルから各フロアまで…ビル管理会社
  • 各フロアから室内の配線…C工事業者(内装を担当する)

と責任範囲の分岐点が複数あります。メガソフトの移転委員会メンバーは、これらの知識を初めて知りました。
移転が決まってから独学で勉強したと言います。

しかし、施工を行うのはあくまでも各協力会社です。メガソフトの社員がこうした細かなことまで知っておく必要はあるのでしょうか。

個室の商談ブース
VR体験スペース
新オフィスに設置された個別の商談ブースやVR体験スペース。通信インフラが整っていてこそ、こうした設備が力を発揮する
私たちは移転のプロではないので、どれほど知識をつけたところでプロにはかないません。ただ、誰が何を行うのか、その責任範囲は把握したほうがよいと思います。そうでなければ丸投げになってしまうからです。

短期間で複数の会社およびスタッフが入り混じるのが移転工事の特徴です。今回も通信工事で、いわゆるお見合いによって工事が不完全に終わる可能性がありました。電話回線工事でビル内の基幹部分までは完了していたものの、オフィス内の床下は配線が未完了だったことがわかりました。移転委員会メンバーが早めに気づき、なおかつ本来担当すべき会社を把握していたことで、速やかに再度工事を依頼することができました。

スケジュール短縮による影響

当初は、入居が8月予定だったところ、物件探しやレイアウトの調整が順調に進んだことから移転日を6月2日へと前倒しした影響も生まれました。各工事のスケジュールが一層タイトになったことで、移転委員会メンバーは細部まで把握する必要をより感じるようになったと言います。

私たちにとってオフィス移転は、10年に一度かもしれない重大な行事です。だからこそ、これまで以上に働きやすい環境を実現したいと願っていました。各協力会社さんは移転のプロセスに慣れてはいるものの、当事者と同じように高い熱量をキープするのは困難です。
リフレッシュスペースで談話する様子
打合せスペースで会話する様子
色にもこだわって選び抜かれたオフィス家具は、発注内容のチェック作業を細かく行ったからこそ、正しく納品された

前章でもお伝えしたように、限られた時間内にもかかわらず家具や設備にこだわり抜きましたが、実際に発注するのは内装を担当する会社です。短期間で集中的に購入したいメーカー名・製品名を伝えるうちに、さまざまな行き違いが起こっていることにあとから気づきました。

個室ブースの仕様間違いや、イスの色指定のミス、什器の発注漏れなどを先に気づけたのは、移転委員会メンバーによる見積もりと発注内容の詳細なチェックを行ったためでした。

事前にこれらを発見できたことで、移転当日およびその後に起きたであろう混乱を未然に防ぐことができました。

しかし、発注内容の全体像を理解できていなければ、仮に細かな確認作業を行ってもミスに気づけなかったかもしれません。やはり、業者さんを信頼、信用しつつも、自身での確認作業は必須だと言えます。

“断捨離”の継続と新オフィスの環境を守るルール設定

オフィス事務スペース
すっきりとした事務スペース。個人の荷物はロッカーや机の下に、パンフレットなどは倉庫にしまうことで、秩序が保たれる

段ボール1箱ルールの厳格な運用

第2章で紹介したように東京オフィスでは、なんとなく長年置かれていた大量の資料や荷物を廃棄する「断捨離プロジェクト」を行っていました。これで大幅に引越し荷物を減らすことができたものの、移転直前になって「社員個人で管理していた資料など、多めに持っていかせてほしい」という声が一部の社員から上がりました。

しかし移転委員会は「個人が管理する荷物は、1名につき段ボール1箱まで」というルールを厳格に守りました。例外を認めると、収拾がつかなくなることを懸念していたためです。移転直後は快適なオフィスでも、やがて散らかってしまっては意味がありません。

第2ラウンド断捨離の効果

第1回の“断捨離”から数ヶ月が経過し、一度は残す判断をした資料や備品の中にも「やはり必要ない」と決定が変わる物品も続出しました。

難航したのは、すでに退職した社員が残した物品の処理でした。多くの企業でも、同じように誰に紐づくものなのかが不明の備品に悩んでいるのではないでしょうか。

現在の業務に直接関係ないと思われるものの

  • 「もしかしたら必要になるのかも」
  • 「本当に不要だとジャッジできない」
  • 「あとで必要になったときに責任を問われても困る」

との考えから、取り残されていたものが多数ありました。

移転委員会には、総務、開発、営業という各部署から選出されたメンバーがいたため、彼らが自らの手で「捨てる」と決断したものも少なくありません。

物品整理中の様子
誰だって「絶対二度と使わない」などと断言するのは難しいです。しかし、いつまでも過去に捉われるのではなく、新しいオフィスで新しい未来をつくるのだという気持ちで、基準を示したつもりです。

新オフィスの快適性を守るための毅然とした対応は、他の社員からも支持されるようになり、移転準備が進むとともに社員の間に「不要なものは手放す文化」が定着してきました。


段ボールには中身を記載しておく

多くの引越し業者は段ボールに、新たな配置場所を示す通し番号(ナンバリング)のみを記載します。これに対して、メガソフトでは中身を詳細に記載することを徹底しました。「展示会備品」「日常業務用」「文房具」など、開梱時の判断をしやすくする情報を記載することで、新オフィスでの業務再開がかなりスムーズになりました。

居抜き退去をスムーズに実現するために

旧オフィスの居抜き退去を模索したところ、同じビルのテナントが手を挙げてくれたため、メガソフトは原状回復工事にかかる費用を削減できました。また什器や備品の処分にかかるコストの圧縮にもつながりました。

居抜き退去で必要になるのが、新たな借り手に譲渡する譲渡品リストの作成です。品目と数を一覧化することで、引継ぎの際のトラブル防止にもなります。

多くのケースでは不動産仲介会社やビルの管理会社が作成を担当しますが、今回は移転委員会メンバーが率先して作成にあたりました。

備品をスマートフォンで撮影し、キャビネットの台数と鍵の有無、机やイスを種類ごとに集計するなど、さまざまな情報を盛り込んだ7ページのPDFファイルを作成するのに丸2日を要しました。

譲渡品リスト
仲介会社や管理会社が下見に来て、それに私たちが立ち会う必要を考えると、それはそれで手間がかかります。どんな種類の備品があるか、だいたいは頭に入っている私たちが作成したほうが早いと思いました。リストの内容が分かりやすいと感謝されたのでよかったです。

ややあいまいな点もあった固定資産の管理方法を見直す良い機会にもなりました。「どこに何が、どのくらいあるか」を正確に把握する重要性を再認識したため、今後は日頃からリストを整備し、定期的にメンテナンスを行う計画です。

6月2日、新オフィスでの業務開始

2025年6月2日(月)、メガソフトの新しい東京オフィスは予定通り稼働を開始しました。

ミッドセンチュリーモダンのコンセプトの元、ダークトーンで統一された空間、効率的に配置された個室ブース、快適なリフレッシュスペースなど、事前シミュレーション通りの機能的なオフィスが実現しました。

電話や会話が気にならないように業務に集中できる環境を作り出したサウンドマスキングシステムも好評です。新オフィスではPC や資料を個人ロッカーに収納して帰る新しい働き方もスタート。デスク周りがすっきりと保たれ、より効率的な業務環境が実現しています。

PMO平河町の概観
東京新オフィス、「PMO平河町」は東京メトロ永田町駅にほぼ直結する便利なロケーション
「嬉しかった」というより、ホッとしました。意外と感動が少なかったのは、3Dオフィスデザイナーを使って、精緻な完成イメージが脳内にあったからだと思います。

今回、移転委員会のメンバーたちが得た最大の教訓は、「専門業者に依頼することと、自分たちが主体的に関与することのバランス」でした。専門性の高い業務はプロに任せつつも、プロジェクト全体の品質を確保するには、発注者側の主体的な関与が不可欠であることを実感しました。

おさらい

  • ● 移転や内装の協力会社が使用する専門用語の意味はおさえておきたい
  • ● 自主的なチェック体制:見積もりや発注内容は自ら詳細を確認する
  • ● 中心メンバーの意欲や情熱は、社内外に伝播する
  • ● 譲渡品リストの作成や段ボールの中身を明記し移転作業の効率化
  • ● 常に主体的な関与を。専門業者への適切な依存と自主管理のバランスが鍵


次章では、移転後に行った移転委員会メンバーによる座談会形式で、一連のプロジェクトを振り返ります。直面した困難と喜びを語るのはもちろん、これから移転を検討している企業の担当者に向けたエールやアドバイスも紹介します。

3Dオフィスデザイナーのスクリーンショット

3Dオフィスデザイナー

本プロジェクトで活用した自社製品「3Dオフィスデザイナー」は、オフィスレイアウトを簡単に3D化できるソフトウェアです。VRでの体験機能や実寸表示により、オフィス移転前に空間を体感することができます。

  • 素早いレイアウト作成
  • VR体験機能
  • 豊富な家具ライブラリ
  • 実寸表示と空間検証