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物流エコノミストが解説シン・物流革命による
「ロジスティクスインパクト」

日本大学 教授 鈴木邦成

近年、ビジネスにおける物流の重要性が高まっています。物流を取り巻く環境がこれまで以上に大きく変化しているのです。

省人化、自動化、無人化が進む物流・ロジスティクス領域で起こっているテクノロジーの革新やサプライチェーンの最適化に関連する大きな胎動を「シン・物流革命」と命名しておきましょう。

『シン・物流革命』は「新」でもあり、「真」でもある物流革命が進展していることを表しているのです。

東京大学教授であった林周二による『流通革命』(1962年)から、60年の歳月が流れましたが、その間、何度も「流通革命」「物流革命」という言葉が使われてきました。

しかし、いずれも本格的な「革命」には至らず、部分的な革新に終わってきました。そのために「革命」という言葉の訴求力も落ちてしまいました。

けれども、ようやくいま、物流テック企業が物流オペレーションの省人化、完全自動化、無人化を進め、「物流が変わることでビジネスモデルが大きく変わる」という革命的な事象が発生しているのです。

そしてその時代を象徴するキーワードが「シン・物流革命」というわけです。「シン」という表現が使われているフィールドはここにきて加速度的に増えていますが、物流にこそふさわしい表現のように思えます。

そこでここでは、シン・物流革命により発生したロジスティクスインパクトを紹介していきます。

情報システムの発達による物流・ロジスティクスの高度化・効率化

シン・物流革命で具現化される物流センターは、第5世代移動通信システム(5G)の登場により、IoT(モノのインターネット)デバイスが(人工知能(AI)とリンクするようになり、物流現場が人工知能(AI)により緻密に管理されるようになります。
国土交通省が2040年までに実現したいと考える物流未来図には、高速道路などで自動レベル4以上の自動運転技術を活用したトラック後続車無人隊列走行の構想があげられています。
 ちなみに自動レベル4とは「特定条件下における完全自動運転」という最高位のレベル5に次ぐ高いレベルです。
 高速道路におけるトラック隊列走行の本格実用化の道筋はすでに出来上がりつつあります。そしてそのカギを握るのは5G通信といわれています。隔運行管制センターを起点に後続車の車両制御、周辺映像の監視と車両の遠隔監視・遠隔操作を行い、円滑な隊列走行を実現していくというわけです。
ただし、それでも隊列走行の完全自動運転には慎重な声が絶えません。そこで注目されるのが、無人搬送フォークリフト(AGF)や無人搬送車(AGV)です。
無人フォークリフトとAGV 自動運転の技術は日進月歩で進んでいますが、人通りの多い公道を、きちんと法的ルールが整備されていない現状では、本格的な実用化にはもう少し時間がかかるかもしれません。
しかし、物流現場で用いられているフォークリフトの自動運転はすでに実用化されています。
フォークリフトはその荷台に貨物を載せて、倉庫内やその敷地を走行し、運搬作業を行う車両ですから、走行範囲が公道ではなく、倉庫内やその敷地となるので自動運転を行っても、目に届く範囲内で監視できます。
さらにAI技術を組み合わせ、機械学習を重ねることで、庫内の走行経路や運搬スケジューリングを自律的に決定していくことも可能になるのです。
AGFを活用して、物流センターで夜間に作業を行えば、有人フォークリフトを使って日中作業を行う場合よりも、時間はかかるものの、人手も人件費もかけずにオフピークの時間帯を有効利用することもできます。少子高齢化による庫内作業の人手不足を確実に補うことにもなります。


DXの先端ツールとしての物流パレットの活用

スマート物流の推進にあたり、物流のビッグデータの管理が重要な課題となっていますが、パレットにRF(非接触)タグなどを装着することで、モノの流れを可視化することができます。
サプライチェーンで用いられる5G対応の一度に大量のデータを高速でやり取りできるIoTデバイスをパレットに組み込めば、リアルタイムでビッグデータを入手、解析できるようになります。5GによりSCMで求められる情報共有は質、量ともに高いレベルで充実するのです。
RFタグを埋め込んだパレット 物流デジタルプラットフォームの構築においてモノの流れを把握する必要があります。しかし形状や重量が異なる個々の物品にバーコードなどを付けても、効率的な処理はできないでしょう。そこで、パレットにRFタグを装着することで、どのような物品がいつどこへ輸送されていくのかということが可視化できるのです。パレット単位で出荷ロットや到着日時などの必要情報を管理するのです。そうして得られるビッグデータをAI技術で分析することでより緻密な物流システムを構築することも可能になってくるのです。
また、物流現場でパレットを活用することで、迅速でスムーズな積込みや荷卸しを行い、トラックが長時間待機するなどの非効率を解消し、ひいてはサプライチェーン全体の効率を向上させることも可能になってくるのです。
物流DXのさらなる推進において、パレットの活用が大きなカギを握っているともいえるでしょう。


シン・物流革命の流れのなかで無人化する物流センター

すべての物流の現場というわけではありませんが、少なくとも最先端の物流センターでは完全無人化、もっといえば、物流センター自体が人間に変わり、在庫レベルを調整したり、入出庫を管理したりする時代は遠からず訪れることになります。
さらにいえば将来には物流倉庫、物流センター自体が自ら判断し、指示を出す「考える物流センター」の実現も迫っています。
ちなみに「考える物流センター」が実現することは、社会的にも大きな意義があります。
それは、あえてたとえるならば、それは「アルテミス計画」で人類が月探査を目指すようなものかもしれません。
まだまだ宇宙旅行できる人は限られているとはいえ、最先端のテクノロジーにより一部の人が宇宙に出ていくことが科学進歩においては象徴的な意味を持つようなものです。 無人化された考える物流センターが現実化することで物流業界や流通構造が一段高いレベルにたどり着くことにもなると考えられるのです。
 ただし、実際、完全自動化を見据えて開設される物流センターがすでに登場しています。完全な自動化というわけではありませんが、半自動化された倉庫も増えています。無人搬送フォークリフトの夜間作業などを進める企業が出てきています。
自動化された倉庫  トラック、フォークリフト、AGVなどの自動運転、無人化、さらには倉庫内の保管や入出庫業務のAI化などにより、物流現場の担い手は「人から機械へ」とシフトしていくことになります。
 物流センターも自ら需要予測を行い、受発注管理、出荷指示、庫内作業指示、在庫管理などをコントロールできる「考える物流センター」に進化していく可能性が出てきているのです。
また保管エリアに設置して自動で棚入れ・棚出しを行う自動倉庫もAIの導入でより一層の効率化が可能になります。
さらにいえば、物流には欠かせないローラーコンベヤについても技術革新が行われています。
コンベヤ上にバーコードの読み取りゲートを設置したり、コンベヤから出荷情報などを入手したりできるシステムも開発されています。
そしてこうした流れのなかで物流センターは「サプライチェーンの司令塔」として考える機能も身につけようとしています。ここでいう「考える機能」とは、たとえば、「最適な出荷量や在庫量をAIが判断し、物流センター運営を管理する情報システムであるWMSなどが、作業者や管理者に指示を出したりすることです。
トラックの出発・到着時間やルートを物流センターの入出荷トラックを管理するバース予約システムや求荷求車システムなどもAIにより自律的に管理される時代が近いうちに来る可能性が高いと考えられます。
ただし、物流センターの完全自動化には大きな投資が必要となりますし、相当な規模の貨物取扱量がなければ、コストメリットも享受できないでしょう。
「将来的には機械化、自動化を視野に入れているものの、まずは客観的な現状分析を、できればデジタル化を図りつつ、進めていきたい」と考える物流企業も少なくないでしょう。その場合、将来的なデジタルツインなどの3D技術のより一層の発達を念頭に3Dまで可視化できる倉庫レイアウトツールをまずは活用してみるというのも、有力な選択肢となってくるはずです。倉庫レイアウトツールを活用することにより、物流現場の課題を浮き彫りにし、最適化されたソリューションを検討することも可能になるのです。

物流倉庫3D



AIによる精緻な需要予測で最適化されるサプライチェーン

サプライチェーンでは製造業、卸売業、小売業がリンクされ、「必要なモノを必要なだけ、ムリ、ムダ、ムラなく供給すること」を目的に出荷数量、在庫情報、販売情報などを共有していきます。
現代の優良企業のほとんどはSCM(サプライチェーンマネジメント)を充実させ、高度なかたちで構築しています。
IoTやAIなどの急速な普及やビッグデータの活用などでSCMの構築に不可欠な情報共有がこれまで以上にスムーズに実現できるようになってきているわけです。
同時に手作業だけでは完成度が低かった物流の現場作業にプログラミングされた機械のフォローが加わることで、荷役プロセスが洗練、補完されていくことにもなります。 言い換えれば、シン・物流革命により、期待と不安が相半ばするなかで、「無人化オペレーションをどの程度受け入れるべきなのか」という難しい選択を迫られる、いわば、「物流補完計画」が成就される日が近づいているわけでもあります。
 実際、気になるのは「いったい、物流がどこに向かっているのか」ということです。
無人化する物流センターを司令塔に、配送ロボットが街中を縦横無尽に走り回り、空からはロジスティクスドローンが宅配便を届けるという近未来図が見えてきました。もはや物流は人間の手から完全に離れ、機械が支配する領域に向かおうとしているのかもしれません。
 シン・物流革命の発生により、米中のビッグテックなども大きな過渡期を迎えようとしています。情報通信分野に限定されたビジネスモデルではなく、物流・ロジスティクス領域をも含めた新しいタイプのビジネスが求められ始めているのです。
変化する物流 AIの指令のもとにサプライチェーンは最適化され、必要なときに必要なだけ必要なモノがムダ、ムラ、ムリなく供給されることになるでしょう。
シン・物流革命により物流・ロジスティクスが大きく変わることを認識しつつも、それを明るい「未来への道しるべ」とするためには、人間と機械を調和させながらオペレーションを展開させる工夫や、そのための緻密な戦略が必要になってくるのは間違いのないところでしょう。

執筆者プロフィール

日本大学 教授 鈴木邦成氏

物流エコノミスト、日本大学教授。博士(工学)(日本大学)。主な著書に『シン・物流革命』(幻冬舎)『物流DXネットワーク』(NTT出版)『トコトンやさしいSCMの本』(日刊工業新聞社)がある。物流・ロジスティクス・SCM関連の学術論文、雑誌寄稿なども多数。専門は物流およびロジスティクス工学。





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