3Dオフィスデザイナーを操作する様子
第2章

理想に近づける
レイアウトの試行錯誤

短期間で修正を繰り返すための切り札

前章まで

手狭になったメガソフト東京オフィスの移転先探し。「理想的」「運命的」と移転委員会メンバーが口を揃えたPMO平河町は、複数路線が利用可能な好立地や築浅ならではの新しい設備など、多くの魅力がありました。ただし、240平米が必要だと試算されたのに対して、14%も小さい207平米。このオフィスへの移転を実現するには、想定より狭い空間に必要な機能を詰め込む必要がありました。今回は、どのようにレイアウトを工夫したのか、スペースを有効活用するための取り組みを中心にお伝えします。

3Dオフィスデザイナーをフル活用

移転先として筆頭候補に選ばれたPMO平河町は207平米と、物件探しの段階で試算された240平米よりも狭いことが課題となるのは明白です。ただでさえ限られたスペースのため、少しでも無駄にする使い方は許されませんでした。

すばやく精度の高いレイアウトを作成

ここで移転委員会のメンバーが頼ったのは、オフィスレイアウトを簡単に3D化できる自社のソフトウェア「3Dオフィスデザイナー」でした。特殊な操作技術がなくても、誰でもすばやくレイアウトを作成できる点が最大の魅力です。CADを駆使して図面を作成することも可能ですが、オペレーターの人手が限られるため、すばやい修正や変更作業を行うのが難しい場合もあります。

PMO平河町のテナント募集用パンフレットに記載されていた図面を3Dオフィスデザイナーに取り込めば、すぐにレイアウトの下案づくりをスタートできます。

  • 社員20名分の座席
  • 適切なサイズの会議スペース
  • リモート会議を行うブース
  • 収納エリア

など、必要な要素を最適配置するための検討が始まりました。

レイアウトの草案_1
パンフレットの図面を下絵にレイアウトの草案を作成

レイアウト案の修正がスムーズ

移転委員会メンバー内に、設計の専門家はいません。メンバーの1名がたたき台となる初期のレイアウトから、約1週間で7案もの改訂版を作成しました。設計の専門知識がなくても、これだけのスピード感で検討の土台が作れたのは、3Dオフィスデザイナーの利便性の賜物と言えるでしょう。

特に会議室の配置や社員席の島をどのように配置するかなど、さまざまなパターンを作成して検証を行いました。

途中から居抜き状態で移転する方向で話が進むと、現況を下絵にすることとしました。比較すると、当初の図面にはなかった間仕切りの壁が落とし込まれて、その中でレイアウトを調整していることが分かります。

内装工事費用の削減にもつながるため、間仕切り壁など既設の設備はできるだけ、そのまま活用する方向で検討を進めます。

居抜き状態の図面でのレイアウト検討
現況の図面を下絵に取り込み新レイアウトの検討がスムーズに


レイアウトを作成したらボタン1つで、3Dの立体図面も確認できます。画像のように机や棚を配置した結果、「実際の目線でどのように見えるか」も大切なチェックポイントです。

「3Dオフィスデザイナーを使うと、図面上では気づかなかった動線の問題や、死角になってしまう部分を発見できました。3Dでの確認も行ったことで、実際に入居する前から空間イメージを共有できたのは大きな利点でした」
3D立体図面
棚や机の高さを再現したうえで実際の目線で
シミュレーションできるのは3Dならではの魅力

同じ画像を見ながら話せるから改善案も出しやすい

新オフィスの下見をした移転委員会メンバーが一目で気に入った7階からの眺望。もし窓際に棚を置いてしまったら、せっかくの景観が損なわれてしまいます。

こうした一見当たり前と思われることも、平面図だけをずっと眺めていると、見落とされがちです。特に平面図を見慣れている設計・施工を専門の仕事としている方以外は、図面を見ながら自分の頭の中で画像を組み立てなければなりません。3Dオフィスデザイナーがあることで、「共通の画像」で会話ができるため、課題点の整理や改善案のディスカッションもはかどります。

7階からの眺望
緑豊かな景色と衆参両議院の議長公邸などが眼下に広がる
ブラッシュアップしたレイアウト
検討を重ねてブラッシュアップしたレイアウト

レイアウトでのこだわりポイント

会社として何を優先するか、また物件の状況によって「こだわり」は変わりますが、メガソフトが大切に検討を重ねたポイントを紹介します。

事務スペースの最適化

まずは中心となる100平米あまりの事務スペースに20席分を確保しました。出社回数が多いスタッフは固定席、在宅勤務のほうが多い社員はフリーアドレスとするなどの柔軟性のある運用によって、限られたスペースで最大限の効率を実現しました。

事務スペース_1
事務スペース_2

計5つの個室ブースを設置

1名用ブースを4つ、2名用ブースを1つ設置。旧オフィスで、大人数で会議を行うケースが少なかったことから、小規模スペースを増やしました。需要が急増していたリモート会議や商談への対応もしやすくなりました。

個室ブース_1
個室ブース_2

快適なリフレッシュスペース

窓際に開放的なスペースを設け、休憩や簡易的なミーティングにも活用できるよう設計されました。パントリーとも連結可能な設計で、状況に応じて空間を拡張できます。

リフレッシュスペース_現実
リフレッシュスペース_CG
左が実際のリフレッシュスペースで、右はCG。高精度に再現できていたことがわかる。


リフレッシュスペース_1
リフレッシュスペース_2

収納スペースの最大化・最適化

個人用ロッカーを24名分設置しました。これまでは各人のデスクに置かれっぱなしだったPCや資料をきちんと収納する文化を醸成。また、鞄を収納する棚を各デスク下に配置し、スペースを有効活用しました。

また床面積の代わりに、天井が高い利点を活かして、倉庫の棚板を6段から8段へと増やし、収納量を増加させることにも成功しました。

収納スペース_1
収納スペース_2

全社員参加による大規模な断捨離

「旧オフィスには、古いバージョンの製品説明書や展示会で使用した備品、管理者のはっきりしない資料などが蓄積されていました。毎年一度の大掃除は行っていたものの、そうした機会でも見過ごされていた“遺産”です。快適な新オフィスに、不要なものは持ち込まないと、強い決意で臨みました」

効率的で機能的なレイアウトを検討したとはいっても、想定よりもオフィスのサイズが小さいことには変わりありません。つい溜まってしまいがちな過去の資料、荷物と決別するには、移転というタイミングはまたとない絶好の機会でもあります。

「新オフィスをより快適な空間にしよう」この合言葉のもと、移転委員会メンバーが中心となり「断捨離プロジェクト」が始まりました。

当初は、私物や自身が管理していた書類などの整理を1時間程度で終えるはずが、大幅に超過して3時間にもおよびました。営業や開発など部署ごとに自分たちが保管していた資料や備品を一から見直し、必要・不要を判断する作業を行いました。

「ひょっとすると、いつか使うかも…」

マニュアル、開発資料、展示会備品など、「もしかしたら必要かも」「いつか見返したいときにないと困る」という判断が積み重なってきましたが、そのほとんどは5年、10年経過しても、一度も使われていません。つまりは、今後も使われない可能性が極めて高い、不要なものだったと気づくきっかけになりました。

新オフィスでは、個人ロッカーが導入されることにより「ロッカーに入る程度の荷物や資料しか持ち込めない」という明確なルールができました。収納スペースが限られているからこそ「必要なものだけを見極めて、適切に保管する」という社員個人の意識づけが重要です。

さらに移転後も同じ気持ちを保ち続けられるかは、一人ひとりにかかっています。

「個人ロッカーの導入によって、変わったのは収納方法だけではありません。私たちの働き方そのものが変わる大きなきっかけになるように思います。デスクに物を置かない習慣が身につき、効率的な職場環境が実現しました。」
断捨離の様子_1
旧オフィスで、多くの不要書類や備品を整理した


断捨離の様子_2

新オフィス_個人ロッカー
新オフィスでは、個人の荷物を机上に放置せず個人ロッカーにしまうルールに

綿密なシミュレーションと断捨離の結果

断捨離プロジェクトの結果、旧オフィスに移転した時から蓄積されていた多くの備品や資料を廃棄し、新オフィスには必要な物品しか持ち込まれないこととなりました。

一方で、細かなレイアウト調整はさらに続きます。作成した図面を移転委員会メンバーで何重にもチェックをし、このままでは後々困ることになりかねないNGポイントを指摘し、さらなる修正を重ねました。これを自社内で完結できるのも、3Dオフィスデザイナーがあってこそです。

こちらのかなえたい要望が明確になることで、この後の工程で設計業者や内装工事業者から見積もりを得るうえでもスムーズになります。

電源の配置や、居抜き物件ならではの現況の確認に役立ったのが特殊なカメラを使って3D画像や俯瞰図を作成してくれる「MatterPort(マターポート)」でした。

メガソフトの3Dオフィスデザイナーと組み合わせることで、さらに効率的でスムーズな移転実施へとつながっていきます。

「MatterPort」については次章のパートナー選定で、詳しくお伝えします。

図面に書き込んだNGポイント

マターポートのスキャン画像
マターポートでスキャンした3D画像

おさらい

最短のステップとして、必要な内容

  1. 3Dオフィスデザイナーはレイアウトの微調整にも便利
  2. 現状の図面を取り込むことで時短にも
  3. 事務スペース、収納、リフレッシュスペースをバランスよく配置
  4. 移転は過去の不要な資料や備品を廃棄するよいきっかけになる
  5. さらに綿密な修正を重ねて、満足のいくオフィスづくりを実現

次章は、内装工事や移転にかかわる業者をどのように選定したのか、限られた予算と時間の中でベストな選択を行うためのポイントに迫ります。

3Dオフィスデザイナーのスクリーンショット

3Dオフィスデザイナー

本プロジェクトで活用した自社製品「3Dオフィスデザイナー」は、オフィスレイアウトを簡単に3D化できるソフトウェアです。VRでの体験機能や実寸表示により、オフィス移転前に空間を体感することができます。

  • 素早いレイアウト作成
  • VR体験機能
  • 豊富な家具ライブラリ
  • 実寸表示と空間検証