With & Afterコロナのオフィスはこうなる!

With & Afterコロナのオフィスはこうなる!

新型コロナウイルス対策として、テレワークやソーシャルディスタンスが定着化していっている今の時代。
オフィスの在り方も確実に変化しつつあります。
今回はオフィス設計のスペシャリストの方たちに、今後のオフィスについて質問してみました。

第二回

オフィスの空調と換気対策

お話をお伺いしたスペシャリスト

ダイキン工業株式会社 空調営業本部 事業戦略室 熊谷空美(くまだにくみ)氏(大阪府)

空気のプロとして、自社の対応

今日はよろしくお願いいたします。 まずは、新型コロナに関して、貴社の業務や製品の状況について伺います。 コロナ前後で変化はありましたか?

熊谷氏:

業務用製品では、建築工事の順延などの影響を受け、前年よりも販売が減少していますが、点検・修理に合わせたエアコン洗浄作業の依頼が例年よりも増加しています。空調機を清潔に保ちたいというニーズがあるように思います。
また、空気清浄機、ルームエアコンといった住宅向け製品の販売が好調です。外出自粛で、自宅で過ごす時間が長くなり、家の中の空気質への関心がこれまでになく高まっているのを感じます。

確かに、わが家もエアコンの買い替えを考えました。(笑
ところで、新型コロナ禍、空気のプロであるダイキン工業様はどういう対応をされましたか?
今日お邪魔している大阪ショールームでは、緊急事態宣言中は休業とのことでしたが、今は受付のところにサーモカメラやビニールカーテンと、消毒液を設置されていましたね。
その他、貴社オフィスや工場などでの対応があればお聞かせください。

ダイキン ソリューションプラザ「フーハ大阪」の受付

取材にお邪魔したダイキン ソリューションプラザ「フーハ大阪」の受付の様子。
ビニールのカーテンとサーモカメラ、受付テーブルの上には消毒液が設置。

熊谷氏:

日本国内では緊急事態宣言発令に伴い、製造やサービスなど一部の職種を除いて時差勤務や在宅勤務を導入し、営業は直行直帰するなどの対応を実施しました。
6月からは夏の繁忙期に入ることもあり出社に切り換えましたが、引き続き時差勤務を推奨し、オフィスでは在室率を減らして向かい合わせに座らない、出張は最低限にしてWeb会議を活用するなど、工夫をしています。
今後は感染拡大の状況に応じて、在宅勤務をフレキシブルかつ効果的に取り入れ、業務の効率・生産性を落とさない働き方を推進していきます。

SDをまもり、向かい合わせには座らない

「オフィスでは在室率を減らして、向かい合わせには座らないようにしています」(イメージ)

製造部門スタッフの在宅勤務はむずかしく、なやましい課題ですね。

さて、ここからは本題・オフィスの空気の話をお聞きしたいと思います。
緊急事態宣言が解除になってオフィスに出勤するときに心配だったのは、オフィス内の空気の状態でした。
空調含めて空気に関して、私たちが知っておくべきこと、確認しておくべきことはありますか?

熊谷氏:

3つあると思います。
何はともあれ、まずは、3密(密接、密集、密閉)の回避が重要です。 部屋ごとに3密状態が発生していないかをチェックしましょう。一つでも当てはまる場合、対策を検討すべきです。

合わせて、オフィスの空調や換気の方式についても把握しておくと共に、部屋ごとに
・空気の流れ~どこから給気されて排気されるか?
・今の換気量はいくらか?
・在室人数は最大何人か?
を調べましょう。
空気の流れは、具体的には給排気口の有無、位置です。
換気量は、ビル側からの新鮮空気の供給量(排気量)です。テナント入居の場合やわからない場合は、ビル管理会社に尋ねてみるとよいと思います。
これまで一人当たりの換気量は20~25m3/h・人(国土交通省基準)とされていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受けて、厚生労働省は30m3/h・人以上を推奨しています。在室人数にこの値を掛けると、必要換気量がわかります。
これらを把握して、空気の流れが良くない場合や部屋の在室人数に対して換気量が足りない場合は対策が必要です。

3密になりがちな会議は、広めの部屋を使い、ドア・窓を開けるなどして3密にならないようにしたい

3密になりがちな会議は、広めの部屋を使い、ドア・窓を開けるなどして3密にならないようにしたい


念のため空調能力についても調べておくとよいでしょう。また、自分達でリモコンを操作してコントロールできるかどうかも分かればよいと思います。もし操作できる場合、設定を確認してみましょう。
換気のスイッチは空調と違ってほとんど触ることがなく、知らないうちにOFFになっていることもあります。全熱交換器で換気している場合は、省エネのため、夏や冬は全熱交換モードに設定しましょう。
換気量については、入居時に換気や空調をきちんと設計している場合はいいですが、ビル設備はそのままに間取りだけ変更して入居したり、入居後にレイアウト変更したり、あるいは当初よりも人員が大幅に増加している場合は、部屋に対する換気量が合っていないことがあるので注意が必要です。この点については、空調能力も同じです。

これまで空調は温度調整しか気にしていませんでしたが、なるほど、いろいろ確認事項があるのですね。


    確認しておくこと

  1. 3密の把握~密接、密集、密閉になっているところはないかを確認
  2. 空気の流れの把握~換気口(給気口・排気口)の位置の把握
  3. 現状の空調・換気設備の把握~空調・換気方式、換気量、空調能力の把握

自社対応できること

多くの企業はテナント入居していると思うのですが、そういう企業が自社で対応できる範囲、つまりオフィスのレイアウト変更や備品追加からC工事くらいで可能な対策があれば教えてください。

熊谷氏:

対策について、(1)換気量が足りていない場合と(2)空気の流れが良くない場合の2つの観点からお話したいと思います。

まず(1)在室人数に対して換気量が足りていない場合です。
この場合は換気量を増やす必要があります。手っ取り早いのは、窓を開ける、ドアを開けることです。
ただし、空調の冷気や暖気は逃げてしまい、部屋の温度は乱れやすくなるので、空調能力に余裕がない場合はお勧めできません。
また虫の侵入や音(声)の問題があります。今の設備のままでも、ダンパーの調節や、換気設備の風量タップ切換、エアハンの風量アップなどで多少対応できる場合がありますので、ビル管理会社に相談してみてください。

換気扇等の設備を追加したほうがいい場合もあると思います。こちらも、増やせる風量には限界があるので、ハード面に頼りすぎず、換気量に合わせて部屋の在室人数自体を見直すことも重要です。

また、設計では換気量が足りているはずなのに、実際に風量を測ってみると不足している場合があるかもしれません。
考えられる原因はホコリ等によるフィルターやエレメントの目詰まりです。
これらを清掃することで風量の改善が期待できます。清掃は自分たちでせずにビル管理会社に依頼することをお勧めします。


    換気量が足りないときは…

  1. <自分たちでできること>
     ・窓・ドアを開ける
     ・換気量に合わせて部屋の在室人数を見直す
  2. ビル管理会社に相談
     ・ダンパーの調節
     ・換気設備の風量タップ切換
     ・エアハンの風量アップ
     ・換気扇の追加
     ・フィルター・エレメントの目詰まり解消

次に(2)空気の流れが良くない場合です。
部屋に給気口しかない/排気口しかない場合、もちろんどちらもない場合もですが、空気の流れが良くありません。
締め切って使用すると給気や排気がスムーズに行われないので、窓かドアを開けられる場合は開けて風の通り道を作りましょう。
サーキュレーターや扇風機を使用すると、強制的に空気を送り込む/外に送り出してくれるので効果的です。給気側から排気側に空気がスムーズに流れるように、置く向きを工夫しましょう。

部屋に給気口も排気口もない場合、ドアを締め切ると換気が全くできていないことになります。
ドアを開け、部屋の外に向かってサーキュレーターなどで空気を送り出しましょう。開けっぱなしができない場合は、時折ドアを開けて空気を入れ替える時間を設けるといいと思います。
1時間に10分の換気より、30分間に5分の換気の方が効果的です。こまめに空気を入れ替えることを心がけてください。


    空気の流れが良くないときは…

  1. 窓かドアを開けて風の通り道を作る
  2. サーキュレーターや扇風機を使うと効果的
     ※置く場所を工夫しましょう。
  3. 開けっ放しができないときは時折ドアを開けてこまめに空気を入れ替える
     ※1時間ごとに10分より、30分毎に5分がオススメ
     
     扇風機やサーキュレーターで空気の流れを作る1時間に10分の換気より、30分に5分の換気が効果的

いずれの場合も、一般に換気量が増えると空調負荷も増えてしまいます。
そのため快適性の維持には空調能力に余裕があるかどうかも重要になってきますので、今後レイアウト変更を予定されている場合は、これらも念頭に検討を進められてはと思います。
また空気清浄機を設置されているオフィスも多いと思います。
空気清浄機で換気はできませんが、高性能なフィルターでの集塵などで空気をきれいに保つ役割を果たしてくれます。適宜活用されるとよいと思います。

これらの対策や換気の基礎知識については、ダイキン工業ホームページ「おしえて空気ナビ」で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。


これからの空調について

最後に今後のことについて伺います。
新型コロナ後の空調・換気に関する設備に変化はあると思われますか?
また、これからのオフィスビルや商業施設の空調計画について、提案やお考えがあればお聞かせください。

熊谷氏:

先ほども申しましたように、一人当たりの推奨換気量は厚生労働省基準の30m3/h・人以上になりつつありますので、設計換気量の見直し、つまり増量は必須です。
また換気量を増やす上で、外気の粉塵や花粉を取り込まないようにする適切なフィルター等の使用も検討すべきです。
加えて、換気量の増加は空調負荷の増加にもつながります。
今後は省エネとの両立が一層求められ、全熱交換方式等などの省エネ換気や、運用の工夫、過度な温度設定を控えた湿度調整による空調など様々な検討がなされると思います。

リモートワークの拡大などで働き方自体が大きく変わろうとしていますし、コロナウイルスについてもまだわからないことが多く、どのような対策がより有効なのか、議論はこれからだと思います。それらに伴ってオフィスという場の役割も造りも、大きく変わるかもしれません。
空調もかつては全体空調が主流でしたが、近年の主流は操作性の良い個別空調です。今後は個人や個別の空間ごとに空気環境を整えることが求められてくるかもしれません。

ダイキンも空気環境を作るメーカーとして、オフィスの空間づくりを考えていきたいと思います。

パーソナル空調実例写真

メガソフトが見学させていただいた某社の空調システム。
空調の吹き出し口が床にあるのも特徴的だが(赤枠内)、
全席足元で風の強さを各自が調整できる(ブルー枠内)。

ただ、今回は設備等のハード面を中心にお話しましたが、ソフト面での対策も重要です。換気だけでは万全な対策とはなりえません。
マスクの着用はもちろん、手洗いやアルコール消毒に勝るものはないのだとつくづく感じます。
建物設備としてできること、個人としてできることを、複合的に対策することが重要だと思います。

そうですね。
空気は見えないので不安になりがちですが、まずはきちんと現状を確認すること、そして、ハード面・ソフト面ともに正しく対処する、ということが大切ということ。
慣れてくると怠りがちですが、ずっときちんとできることをしていくことが大切だなと思いました。
本日はありがとうございました。


対アフターコロナのオススメ情報

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3Dオフィスデザイナー
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