導入事例

マイホームデザイナーでプランニングした家を
学校主催の作品展に出品

兵庫県立東播工業高等学校
建築科 教員/一級建築士 塩﨑 修 先生

兵庫県立東播工業高等学校・建築科は毎年1月に近隣のショッピングセンターで生徒が授業で制作した図面や模型などの作品展を開催しています。
その作品展でひときわ目を引く展示が “街”のジオラマです。この年のテーマは開催予定だったオリンピックで五輪をかたどったこの街に並ぶ40軒の家(模型)は同校2年生40人が各自3Dマイホームデザイナーを使ってプランニングし、製作した「作品」です。
2年生をご担当で“街づくり”を指導されている塩﨑先生に3Dマイホームデザイナーを使った年間のカリキュラムと作品展についてうかがいました。

2020年1月の作品展の様子
2020年1月の作品展の様子2020年1月の作品展の様子

▲写真は2020年1月(2019年度)の作品展の様子

作品展までのカリキュラム

- 作品展では2年生の“街”は人気の展示ですね。私も楽しく拝見しました。
新学年のスタートから作品展開催までの授業カリキュラムを教えてください。

塩﨑先生 :

街のコンセプトは私が作ります。基本的には幹線道路から入ったニュータウンに集会所、幼稚園、公園、ショッピングセンターなどがあり、40軒の家が並ぶ街、という設定です。
4月の最初の授業では、こちらのような資料を配って"街"のコンセプトを説明します。

街のコンセプトシート

▲最初の授業で配られる街のコンセプトシート。
2021年度の街のテーマは「無限大」。記号「∞」を模った幹線道路の内側に広がる街づくりに、2年生40人が取り組む

1人分の敷地は168㎡=約50坪として、各自の家の場所決めをします。場所を決めるのは道路と日照を考慮して設計させるためです。去年はくじ引きで決めました。
そのうえで生徒たちには、自分の住みたい家のエスキス*を書かせます。

(*エスキス:プランニングの初期段階で簡易的にコンセプトや概念図をまとめたもの)

生徒が提出した素みたい家のエスキス 生徒が提出した素みたい家のエスキス 生徒が提出した素みたい家のエスキス

▲最初の授業で生徒が作成した「自分の住みたい家」のエスキス。
書式は指定せず、自由に考えて提出させる。(画像クリックで拡大表示します)

生徒が提出したものを私たち(建築科の先生方)がチェックし、生徒とやりとりをしてプランの方向性を決めます。ここまでで大体2週間くらいです。

プランの方向性が決まったら、住宅のプランニングを始めます。このプランニングに3Dマイホームデザイナーを使用しています。
プランニングの最初の授業で3Dマイホームデザイナーの操作方法を説明します。
敷地の書き方、方位の決め方、間取りを入れて、と実際に考えていく手順で説明していきます。

- 3Dマイホームデザイナーを使った時の生徒さんたちの反応はいかがですか?

塩﨑先生 :

生徒たちはパソコンやマウスを使うことには抵抗はないようですし、部屋をポンポンと置いていくだけの簡単操作なのですぐに使えています。
「立体化」をクリックして家が立ち上がるときには「おぉ〜」っと言ってびっくりしていますね。(笑)
若干ずれたり、歪になっている生徒もいますが、それは間取りがずれているからなので、修正させます。

- プランニングの授業では、どんなご指導をされるのですか?

塩﨑先生 :

基本的には自由に考えさせています。
ただ、中には廊下がものすごく長いとか、風呂が3畳もあるとか、びっくりするような間取りを考える生徒もいます。いくら「広い風呂がええねん」とは言っても、現実の家としてはありえませんから、そこは説得して修正させます。
授業ですから、きちんと建築を学ばせることは大切です。

3Dマイホームデザイナーで作ったプランを生徒と一緒にチェックします。
このときのチェックがとても大切です。ここできちんと完成させておくと、プレゼンボードも模型もスムーズに作れるからです。

生徒がマイホームデザイナーで作成したプラン生徒がマイホームデザイナーで作成したプラン

▲生徒が3Dマイホームデザイナーで作成した間取り(プラン)。手書きの文字は塩﨑先生によるもの。
右側のプランには「再考」の文字。先生方が厳しい目でチェックして現実的なプランへと導く。

プランができたらプレゼンボードを作成させます。1学期ではここまで進めます。
2学期は作ったプランをもとに模型作りをします。冬休み前には模型を完成させて、1月の作品展に臨みます。

生徒がマイホームデザイナーで作成したプレゼンボード 生徒がマイホームデザイナーで作成したプレゼンボード 生徒がマイホームデザイナーで作成したプレゼンボード

生徒が製作した住宅模型 生徒が製作した住宅模型 生徒が製作した住宅模型

▲3Dマイホームデザイナーで作成したプレゼンボードと2学期に製作した模型。
作品展にはこの2点を出品する。(画像クリックで拡大表示します)

- 3Dマイホームデザイナーを使うメリットはどこにありますか?

塩﨑先生 :

3Dマイホームデザイナーがなければ1月の作品展は無理です。
3Dマイホームデザイナーを使うので、プランニングからプレゼンボード作成までを1学期で完成させることができ、2学期の全授業を模型作りに使えます。手書きや他のCADでは1学期中にそこまで進められないと思います。
3Dマイホームデザイナーは、感覚的に作りやすいですし、説明しなくても直感で使えるから短時間でプランが作れるのだと思います。
本校は作品展を始める前から3Dマイホームデザイナーは導入しており、3Dマイホームデザイナーがあったから作品展が始められたと思います。

塩﨑先生

▲教員になる前は設計事務所で設計の仕事をしていたという塩﨑先生。当時はCADをご利用だった。
「CADは細かい設定ができますが、その分面倒でもある。3Dマイホームデザイナーはほとんど自動でしてくれるのでとても楽ですね。施主との打ち合わせの場でプランニングや修正もできて、立面も見せられますから、実務でのプランもこれで充分です。」

東播工業高等学校が作品展を開催する理由

- 毎年作品展を開催されている理由を教えてください。

塩﨑先生 :

当校が作品展を始めたのは8年前です。開催を始めた理由は、生徒の作品を外部の人にも見てほしかったからです。当初は市のブースに展示させてもらっていましたが、より多くの方に見て欲しいとの思いで、2015年からは近隣のショッピングセンターのイベント広場で開催させていただいています。
作品展の設営、撤収も生徒がしますし、会期中は生徒も交代で会場にいて、お客さんの質問に答えたりもします。
1年かけて作ったものを、友だちや家族だけでなく、多くの人に見てもらえること、自分たちの作品を見た人の反応を見られるということには、作るだけでは得られない色々な学びがあると思います。

生徒の作った模型は屋根を外して中を見られるようにしてある。

▲模型は屋根を外せるように作ってあり間取りが見られるようになっている。来場者の中には、ひとつひとつ屋根を取って間取りを見ていく人もいる。

もうひとつの理由としては、本校のことを知ってほしいという思いです。
多くの方は工業高校を知らないと思うので、"こんなことしている"を伝えたい。学校活動の周知は次の生徒を集めることにもつながります。
買い物に来られた方が立ち寄って見ていってくださって、当校を覚えて帰ってくれるとうれしいですね。
だいぶ定着してきたので、「毎年楽しみです」 「来年も楽しみにしてます」と声をかけてくださる方もいらっしゃいます。

2020年度は新型コロナの影響で、予定していた街のカタチにはできませんでしたし、生徒は設置と撤収の作業しかできず、残念でした。今年度はいつも通りの作品展ができればと思っています。

2021年1月の展示会の様子

▲2021年1月開催の作品展の様子(2020年度)。
2年生の作品は、プレゼンボードの前に模型を設置し、密にならないように工夫した。

- 2022年1月の作品展も楽しみにしています。今日は貴重なお話をありがとうございました。

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