ミュージックCDデザイナー ユーザーズ倶楽部
   
 

   CDの情報は凹凸で記録されている        

 先に、CDの基本的な仕組みについて、もう少し見ていきましょう。

  CDプレーヤーとCD−ROMドライブは、第2回と第3回で紹介したとおり、CDのメディアに記録された信号を、レーザー光線で読みとることで、デジタルデータを再生します。
  では、そのCDには、どういった形でデジタル信号が記録されているのでしょうか。  

  CDの表面には、電子顕微鏡でなければ見えないほどの、小さな凹み(「ピット」と呼ばれます)が無数に存在しています。このピットこそが、CD上に記録されたデータの元になっているのです。
  ピットは、わずか1.2mmというCDの(厚さ方向の)中心にある、プラスチックの基板につけられています。CDは、このプラスチック基板の上に、金属の反射層とポリカーボネイトという特殊プラスチックの保護層が重ねられた構造になっています。
  このピットの部分に対してレーザーが当たると、ピットのない部分に比べて、反射してくるレーザー光が弱く(つまり暗く)なります(このようにレーザー光が反射するのは、反射層の効果です)。  
  この反射光の強さをデータとして読みとるのは、以前紹介したとおりです。こうした原理によって、ピットが反射光の強弱になり、それがデジタル信号の「0」と「1」としてCDプレーヤー(またはCD−ROMドライブ)から出力されるのです。


   市販CDはプレスという方法で作られる        

  さて、この「ピットによってデジタルデータを記録する」という基本的な原理は、市販されているCDでも、CD−R/RWドライブで作られたCDでも、変わりはありません。
  ただし両者は、そのピットをつくるための方法が大きく違っています。
  市販されているCDは、「プレス」と呼ばれる製造方法で作られています。これは、まずマスターとなるCDを作成し、そこから型を取ります。型を取ると、凹凸が逆になったCDが完成します。
  この「スタンパー」と呼ばれる機械を使い、CDでピットの記録されているプラスチック素材にはんこのように押しつけると、マスターとなるCDと同じ凹凸ができます。
  専用の工場は必要になりますが、1枚のCDをつくるのに必要な時間が非常に短いため、大量生産が可能です。音楽CDをはじめとして市販されているCDは、ほとんどがこのプレスによって作られています。
  市販されているCDは、CD−RやRWと区別するために、「プレスCD」と呼ばれることがありますが、その呼ばれ方は、この製造方法に由来しています(プレスで作成されたCDという意味です)。

   色素を化学変化させ、ピットの変わりにするCD−R        

  市販CDはプレスによって作られているわけですが、CD−R/RWでは、当然プレスという方法は使えません。しかし、要はピットのように、レーザー光線を当てたときに、反射率の異なる部分ができればよいということになります。
  CD−RやCD−RWは、まさしくこの「反射率の異なる部分」をレーザー光線で作れるような設計がなされたメディアなのです。


  CD−Rメディアは、プラスチック基板と反射層の間に、有機色素によって作られた記録層というものが増えた4層構造になっています。CD−Rが「記録のできるCD」となっている秘密が、この記録層の色素です。
  この色素は、強いレーザー光による光と熱が加わると化学反応を起こし、状態が変化します。このレーザー光が当たった部分は、反射率が低下します。これがピットに相当する部分となります。
  CD−Rは、この反射率の変化がプレスCDのピットとほとんど変わらないレベルとなっているため、ほとんどのCDプレーヤーやCD−ROMドライブで読み出すことができるのです。
  ただし、メディアの色素は一度変形してしまった部分を戻すことはできないものとなっていますので、一度記録した場所を再利用することはできません。
  なお、CD−Rの色素は出力の強い光でなければ反応しないようになっていますので、CDを読みとる程度のレーザーの強さでは化学変化は起こりません。また同じ理由から、CD−Rドライブには、CDプレーヤーやCD−ROMドライブよりも出力の大きいレーザーピックアップが必要となっています。
 
   反射率が変化する特殊な素材を使ったCD−RW        

  対して、「CD−Rは色素が変化を起こして、それを戻すことができないのだから、記録は1回しかできない。であれば、元に戻せる素材で記録層を作れば何回も書き換えができるのではないだろうか?」という考えで作られたのがCD−RWメディアです。
  CD−RWの場合は、レーザー光の照射によって、記録層が「結晶状態」と「非結晶状態」という変化させることができる特殊な素材を使った、「相変化記録」という方式を使っています。
  CD−RWに使われている素材は、熱によって状態が変化します。低い出力のレーザー光でゆっくりと加熱すると、冷えたときには結晶状態に変化します。また、高い出力のレーザー光によって急激に加熱すると、その熱が冷えたときに非結晶状態になります。
  そしてこの素材は、結晶状態では反射率が高くなり、非結晶状態では低くなります。CD−RWに対応したドライブは、この反射率の違いを読みとり、データを再生しているのです。
  ただし、この素材の反射率は、プレスCDやCD−Rと比較すると低いものとなっています。そのために互換性が低くなってしまうのは、第3回で説明したとおりです。

(ハッシー)

 
 

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