前編でご紹介したような、必要な基礎知識、専門能力、推進能力などの知識と技術をもったオフィスデザイナーは、一朝一夕で生まれるものではありません。
膨大なジャンルに及ぶ総合的なノウハウと専門技術を身につけなければならないのですが、経験の蓄積によってはじめて培われるものなので、才能を持ったデザイナーでも最低10年の実務経験が必要でしょう。
デザイナーとしてプロジェクトを任されて活躍できるようになるには、その才能が発揮できる機会に恵まれた業務環境とデザイナー個人の努力も必要です。
したがって、このような知識と技術を持ったオフィスデザイナーは滅多にいないので、プロジェクトを共にする機会に恵まれたらたいへんな幸運なのです。
このような優秀なデザイナーによるオフィスの計画は、企業の業績や知的生産性を左右する影響力をもっています。
しかしオフィスに対する要求の複雑さと多様化は、一人のデザイナーのできる業務範囲を徐々に狭くしていますので、全てをこなせるオフィスデザイナーを求めるより、近年のオフィスプロジェクトはその業務を分解して、コンサルタント、プランナー、プロジェクトマネージャなどとチームで進める時代になっています。
このようにしてできあがるオフィス戦略は、ファシリティマネジメント(FM)の一貫として、企業経営にとって重要な位置づけとなっています。
従来の技術や効率優先の時代を経て、新たなステージのオフィス創出に向け、さらにさまざまな才能をもったスタッフやデザイナーが協業をして、技術と社会、効率と快適性、自然環境保護と経済の調和を目指した新たなFMに変容させなければなりません。
そのような協業の場においてオフィスデザイナーが、「人間主体のデザイン」を掲げ、本来の役割を発揮させることによって、その重要性はますます高まることでしょう。
新たなオフィスとオフィスデザインの価値を作っていくのは私たち自身なのです。
Kepla Design Studio 大倉清教
大倉清教 有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長 これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。 著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。 |