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大倉清教のオフィスデザインコラム「オフィスのプランは自分たちで創る!」

第5回 「CAD」の歴史と役割の変化

CAD(Computer Aided Design)…言わずと知れたコンピュータを利用したデザインツールのことです。

日本では、約20年前からオフィスデザインにも利用されるようになり、作図の効率化と修正変更の容易さを求めてあっという間に設計ツールとして拡がりました。

さらに作図されたデータは受発注やCAMと呼ばれる生産システムに応用されるようになると企業システムの中心的存在にまで発展して利用されるようになったのです。


しかし、当時はパソコンの能力が低く、そのためホストコンピュータを利用した大がかりなシステムで、CPUをはじめとして、デジタイザーやプロッターなど の大型入出力機、記憶装置、バックアップ機器、それをコントロールするコンソールが繋がり、専用の空調を効かせたコンピュータ室を用意して、専任者による 管理も必要でした。

さらに間仕切り配置、家具レイアウト、積算リスト出力には、汎用CADをそのまま利用することができないので、大手メーカーを中心に自社オリジナルCAD開発がなされていました。

一時期、UNIXベースのエンジニアリングワークステーションによる高速処理とネットワークが主流になり、分散型のシステムで効率化を図りましたが、それでも情報システム投資と開発・運用経費は膨大で、経営を圧迫するほどになります。


そのため、設計部門とデザイナーには設計標準化と業務効率化が求められるようになり、画一的なオフィスづくりを蔓延させる荷担をしたわけです。

皮肉なことにCADのために設計者の創造性と顧客満足を犠牲にしたと言えるかも知れません。


このように家具メーカーを中心にCADシステムに多大な経費をかけて開発・運用されていたのですが、コンピュータのダウンサイジング(小型化)とバブル崩壊後コンピュータシステム投資の圧縮によって、PC(パソコン)ネットワークによるCADが普及するようになります。

個人のデザインツールとして利用されるようになると、配置検討、緩衝チェック、色彩の検討等さまざまなシミュレーションを自由に行えるようになります。

ここに来てようやく本来の[コンピュータを利用したデザイン]が可能になりました。

そして現在では、CADソフトもパッケージとして販売され、エンドユーザーが利用できるレベルまで安価で、ノートパソコンでも使用できるくらいデータも軽くなりました。

また操作が容易であるだけでなく、個々の要求にあわせて仕様を変更することのできる自由度も高まり、データの互換性も進んで情報交換も可能となりました。

このことが今後いっそうのユーザーへのCAD普及を促進するでしょう。


一方で企業活動においては環境変動が激しく、オフィスの移転や新築等の大がかりなプロジェクトばかりでなく、業務や人員配置の変更に伴って日常的に要求を変化させています。

日常的な細々した運用を専門家に任せるほど恵まれた企業やオフィスは、そんなに多くはありません。

CADの使い手はプロの設計者からエンドユーザーに移行する時代になろうとしています。それとともに設計専門家の役割が変化することは、当然のなりゆきと思われます。

Kepla Design Studio 大倉清教

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著者プロフィール

大倉清教
(おおくら きよのり)

有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長

これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。
現在、FMコンサルティングやインテリアプランニング&デザイン、家具デザインなど幅広く活躍中。

著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。


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