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大倉清教のオフィスデザインコラム「オフィスのプランは自分たちで創る!」

第13回 「経営効率」とオフィスデザイン

私たちの仕事の場としてのオフィスは、企業活動のための機能の集まりです。その主体は情報処理の機能ですから、その情報処理機能の効率や正確性が最優先課題となります。
そしてそこで生み出される成果、その多くは売る上げや収益率となりますが、その効率性を追求するために古くから合理化が求められてきました。

効率といえば、「成果としての収益」を「投入するコスト」で割った値となります。簡単に言えば、投入するコストを抑えれば、効率が高まりますね。その計算式は分母の投入コストを最大限まで絞りきった状態が今のオフィスなのです。間違った事務効率のブームがそれに拍車をかけ、さらに惨めなオフィスづくりが加速してきたように思えてしょうがありません。


先進国随一の自殺者の増加、フリータやニートの氾濫、日本の労働環境はまさしく最悪の状況になっているのです。もちろんこれは単にオフィス環境だけの問題ではありませんが、オフィスワーカーをあたかも事務処理のための歯車と考えることが一因として考えられます。
まだまだ日本の企業の中にはオフィスワーカーが「生身の人間」であることに気づかない企業がたくさんあります

一方で日本のワーカーはそれが当たり前と思っています。自分たちの人生の大半を過ごす生活空間に対する基本的な健康や快適性を要求しようとしません。にもかかわらず、企業人としての優秀さは変わらず、与えられた使命を必死にやり遂げる意志とねばり強さを発揮して、豊かさを感じない生活に疲弊していることに気がつきません(多くのワーカーは依然、ワーカホリックです)。

このようにどんな劣悪な環境でも能力を発揮する社員に恵まれた日本の多くの企業においては、オフィス空間の改善がどの程度、効力を発揮するかを検証することが困難です。(オフィス環境を良くしなくても黙々と働いてくれるからです。)したがって経営者にその「オフィスへの投資」を理解させることは至難のわざと言えるでしょう。
しかしながら、人間の頭脳の働きを歯車として考える企業が、効率優先、生産性向上を唱え、最も重要なワーカーの意欲や生き甲斐、ひいては独創性や創造性を捨て去っているのです。


このように考えるとオフィスづくりは、単なる設計者やデザイナーの仕事ではありません。経営者とワーカーが人間の知性の働きを最も重要と考え、有能な人々が集まることによる「価値創出のメカニズム」と「空間品質がもたらす影響」について、もっと関心を持ち、真剣に考えることがベースになければいけません。

まさしく、自分たちのオフィスは、自分たちで創るという発想がなければデザイナーに提案を求められても、どうしようもないのです。

Kepla Design Studio 大倉清教

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著者プロフィール

大倉清教
(おおくら きよのり)

有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長

これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。
現在、FMコンサルティングやインテリアプランニング&デザイン、家具デザインなど幅広く活躍中。

著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。


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