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大倉清教のオフィスデザインコラム「オフィスのプランは自分たちで創る!」

第11回「スパイラルアップ」のデザイン

オフィスの移転やリニューアルプロジェクトでは、工程表の最終到達目標が竣工時となっています。そのために「完成」に向けて関係者が全勢力をそこに集中します。すばらしいオフィスが出来上がることは、関係者にとって大きなイベントであり、それを祝うことであらたな門出に向けた活力が生まれることでしょう。

しかしながら利用する側からすれば、新たなオフィスの誕生がスタートであり、その時点からオフィスを活用するための知恵と工夫が必要になるのです。
オフィスの中は、日々変化し、計画時点で要求された建物機能や設備仕様とのずれが生じています。変化や競争の激しい業界ににあっては企業活動のこの「ずれ」を吸収することができなければ、死活問題ともなります


イメージ写真たとえば、情報通信技術の進展でオフィスの中で働く人々の働き方は大きく変わります。携帯電話や電子メールの出現はそれまでのデスクワークや会議のあり方を変えてしまいました。仕事の効率という面では、このような「情報通信」の果たす役割は大きく、それを導入している企業とそうでない企業では明らかに事業推進のスピードに差が出てくることでしょう。

また、社会情勢や経済動向の変化を先読みして、企業内の「組織」は対応することになります。近年の激しい動向変化は、それまでの固定的な組織とは異なり、たいへん流動的になり人事や管理のあり方を大きく変えています。
企業内のオフィスワーカーは固定的な人材としての正社員ばかりでなく、派遣や業務委託、外部のアライアンス企業のスタッフがオフィス内で仕事をするケースが増えているのです。


多くの人々の創意で作りあげたばかりのオフィスは、簡単には変更できないものですが、作り上げた途端にこのような変化への対応を迫られることになるのです。近年のオフィスにおいては、そのような変化に対して迅速にそして柔軟に対応ができることを最も重要な課題としています。

そのためには、竣工時のことだけを考えてオフィス計画を作り上げてはいけません。その後の変化を予測し対処可能であることが大切です。しかしながら、あらかじめ計画されていることは盛り込めるとしても思いがけない事態や不測の事情により、なかなか中長期的な視野で予測することが難しい状況になってきました。


では、どうすればよいのでしょうか?・・・それには、その時々の状況をチェックしてその都度、修正を加え続ける仕組みを作り上げることでしょう。

POE(Post Occupancy Evaluation):入居後評価という手法があります。
POEは、オフィスの移転やリニューアルが完了して数ヶ月、その後定期的にオフィスをチェックするものです。アンケートやヒアリングによってオフィス実態調査を行い、要求や問題点を抽出し、オフィスの評価を行います。その上で重要で早急な対応を求められる課題に対して解決策を策定します。

イメージ写真POEによって抽出された解決策は、オフィスの改装やレイアウト変更ばかりではありません。ワーカーの「働き方」や「運用サービス」の提供を変更する方が効果的な場合もあります。また、「情報システム」の活用によって解決する問題もあるでしょう。ですから総合的な見地からの評価・分析が必要となります。

POEは、オフィスワーカーが快適で機能的にオフィスを使うことだけを目的にするのではなく、もちろんそれが最も重要なのですが、「経営」にとってそのオフィスへの投資が妥当なものであるか?将来の事業ビジョンに向かって、着実に効力を発揮しているか?などのチェックも専門家を交えて総合的に検討を行います。


このようなPOEによって、オフィスを定期的にチェック・修正することをお薦めします。POEの仕組みを取り入れることで、オフィスは常に快適で機能的な環境を維持向上させることができます。ひいてはその企業の事業生産性にも大きく寄与することでしょう。

もし、みなさんがオフィスの計画をする際に、工程表のエンドが「竣工」になっていたら、その後にもう一文字、「POE」と入れてください。

Kepla Design Studio 大倉清教

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著者プロフィール

大倉清教
(おおくら きよのり)

有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長

これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。
現在、FMコンサルティングやインテリアプランニング&デザイン、家具デザインなど幅広く活躍中。

著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。


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