オフィスデザインは、そこで働く人々の知的な活動を支援する仕組みを作り出すことであり、単に空間のデザインだけを考えたのでは十分ではありません。
オフィスにおいては企業の活動を組織的に運営するための組織作りや人事・経理などのマネジメントシステムを構築することが必要です。
これらは事業や組織のデザインとして扱われる必要があります。
また、オフィスの情報処理を効率的におこなうためには、情報処理の大半を担う企業情報システムとネットワークのデザインが最も効果的で重要です。
また、オフィスワーカーが安心して仕事に集中するための業務支援サービスや福利厚生と生活支援サービスも不可欠です。
これらのサービスを受け手の視点から考えれば、必要に応じて一元的に供給する仕組みをデザインすることが課題になります。
これらの計画は、カタチとして表れにくいので、空間デザインとは関係がないように思えるかも知れません。
しかし、これらの要素を総合的に検討し、最も効果的に設計された結果としてワークスタイルのデザインがなされ、空間デザインが実現するのです。
別の言い方をすれば、空間デザインは組織や業務、情報システムの働きにおいて、従来とは異なる要求が生じた際に計画されるケースがほとんどですので、それに伴う新たなワークスタイルが適正に機能するように同時並行的な計画を必要とするのです。
もともと空間デザインは、人間の心理や生理的な影響を考慮してその場における人間の活動を最も安全にそして効率的かつ快適にするための手法と考えることができるので、そこに集まる人々にどのようなことを感じて生活し、働いて欲しいのかというワークスタイルが分からなければ、デザインのしようがないのです。
要するに人々の行動目的と空間の及ぼす影響を最適化することが最大のテーマです。
オフィスを構築するプロジェクトは、空間リニューアルや移転が完了すればそこで完結するかのようにプロジェクトメンバーが解散してしまいます。
しかし、そこで働く人々の考え方や働き方、すなわちワークスタイルは、なかなか容易に変革されません。あらたな試みをすればするほど従来とのギャップを埋める努力と支援が必要なのです。
今日のように変化の激しい時代にあっては、常にこのギャップを最小限になるように修正しなければなりません。
したがってオフィスデザインは永続的な運用の中で修正され続けるものなのです。
やりっ放しのオフィス計画は無責任です。
ワークスタイルの変革を目指したオフィスデザインであればなおさらのこと、空間を変えても人々の気持ちや働き方はそれほど簡単には変わらないということを念頭におくことが大切です。
オフィスデザインはむしろ入居後から始まると言っても過言ではないかも知れません。
ワークスタイルのデザインには、三次元空間に時間軸を加えた[四次元デザイン]の発想が必要です。
Kepla Design Studio 大倉清教
大倉清教 有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長 これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。 著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。 |