3Dオフィスデザイナー ユーザーサービス

大倉清教のオフィスデザインコラム「オフィスのプランは自分たちで創る!」

第6回 「働き方」のデザイン

私がこの仕事をはじめた時に「オフィスデザインはユーザーの意志の代行行為だ」と教えてくれた先輩がいました。

考えてみれば、ユーザーがどのようにオフィスで働き、どのように利用したいのかを知らないで設計ができるわけがないのです。

しかし、ユーザー側では、自分たちの働き方以外にどのようなものがあり、どうしたらより便利なのか分からないから、私たちに相談するわけです。

それを参考にして自分たちの働き方を考えたいのです。・・・ということはオフィスの使い方を使う人と一緒に考えることが、私たちの大切な仕事だと気づくはずです。


そして、重要なのはユーザーの「意志」は、その様な「潜在的な意志」だということを認識しておかなければ、デザイナーの役割はありません。

「どのように働きたいのか」という疑問を、いきなりワーカーに投げかけてもなかなか答えは返ってきません。

一般のワーカーは普段そんなことを気にしていないし、企業内であれば自分の意志で仕事のやり方を変えることができないワーカーが大半だからです。

当然、その答えは企業によって異なるはずですし、さらに企業は日々変化しているので昨日と今日、明日でも異なるでしょう。

ワーカーの働き方も自席のみならず、あちこち動き回ることが多くなっているから、働く場と働き方の最適解は無限に拡がります。


オフィスデザインには、その様に多様化したワーカーの働き方をサポートすることが求められ、変化する要求に対して動的に適合することが求められているのです。

その解決策はまちまちで、デザイナーの対応力と創造性が求められているのです。

ここで私たちオフィスデザイナーの仕事は、「働き方」をデザインするのであって、空間だけを設計しているのではないということを再認識しなければいけません。


なぜなら働き方を変えるには、組織変更が手っ取り早いこともあるでしょう。
また就業規則や業務マニュアル、人事規定を改訂する方法もあります。
それ以上に情報システムやITの道具の方が効果的に業務フローを変更できます。

「働き方」をデザインするにはこれらを総合的に検討して「場」を形成するのです。

したがって「働き方」を変えないで、空間だけを変えることは、あまり意味はないと言わざるを得ないでしょう。


空間デザインは、文字通り「場」を作り出すのに不可欠な要素です。

業務サービスや情報システムは、空間デザインによって効果を発揮するばかりでなく、それを無視して計画ができないことを訴え続けなければなりません。

今あなたが、新しいオフィス=新しい「働き方」を作る仕事に関わっているのであれば、その働き方を体現することで新しい「働き方」を提案したほうが理解しやすいでしょう。

プロジェクトを推進する仕組み、情報伝達の方法と道具、そして運営ルール、そしてその空間、それらを組合せて自らが新しい「働き方」を演じることによって、提案しようとする新しい「場」を理解してもらうのです。

「働き方」のプレゼンテーションは、自ら実演することが一番なのです。

Kepla Design Studio 大倉清教

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大倉清教
(おおくら きよのり)

有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長

これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。
現在、FMコンサルティングやインテリアプランニング&デザイン、家具デザインなど幅広く活躍中。

著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。


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