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大倉清教のオフィスデザインコラム「オフィスのプランは自分たちで創る!」

第14回 「企業文化」と感性のオフィスデザイン

自分の家を建てるときのことをよく考えてみてください。
自分流の住まい方や家族構成、こだわりのコレクションや趣味、それから予算……。
これを理解しない建築家に自分の家に設計をあなたは依頼しますか?オフィスデザインを依頼されて、すぐに数案の図面を持って行くのは、クライアントのことをよく知らないで当てずっぽうの仕事をしているようなものです。

十分な打合せと情報提供をしないで依頼したクライアント側にも、責任はあります。
オフィスを作るには動機があるはずです。なぜ移転や建て替えをしなければならないのか?またそこで始まる新たな事業展開をどのように考えているのか?その事業は社会にとってどんな価値を提供できるのか……など自分たちの社会に対する役割を再認識することも必要です。

この共通認識なしで仕事をはじめると、必ず根本的な問題にあたってしまい、大幅なやり直しや軌道修正が発生して、お互いにそこまでかけた時間と経費の無駄遣いになるばかりか、時には修復できないくらいの溝が生まれたりするのです。


オフィスプラニングやデザインは、その多くの時間をクライアント企業を知ることに費やします。
企業には変えてはならないものと変わるべきものが共存しています。変わらざる企業の風土や文化を守り、もう一方では新しい仕組みや「働き」を取り入れて、その機能をかたちにすることになります。
そうしてできあがったオフィスは、まさしく経営理念を具現化したのもとなるのです。

オフィスの外観やエントランスロビーばかりでなく、執務スペースがそれを如実に表すことになります。それは机の書類の置き方や会話の調子、場の雰囲気などそこで働く人々から受ける印象であり、そこを訪れた人が自然に「感じるもの」となるのです。
執務スペースは、そこで生活する人々の活動に最も重要な影響を与えるので、明るく快活な動きがあり、もてなしを感じるオフィスと、何となく好きになれない、居心地が悪いオフィスでは、天と地の差があります。


自然に人が集まり、仲間意識を形成することに役立つという機能は、どのように評価されるのでしょうか?
これは効率や生産性とは無縁のもので、数値では計れない機能です。しかもそこにもたらされる知識や知恵も、数値では計ることができません。オフィス計画を計算尽くで行ってきた過去の手法では、もはや生き延びるための「知的活動の場」を作れません。
「感性」を無視してオフィス計画をすることができない時代になってきました。

上質な人材が集まり、生き甲斐を感ずる職場で育ち、実りある会話を生み出すには、上質な空間が必要となっているのです。
単にお金をかければよいというものではありません。クライアント企業を理解し、理念を共有化した上質なデザインのできるデザイナーが今、最も重要な役割を担っているのです。そして企業の本当の「顔」を具現化する責任を負っているのです。

Kepla Design Studio 大倉清教

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著者プロフィール

大倉清教
(おおくら きよのり)

有限会社ケプラデザインスタジオ(Kepla Design Studio)代表取締役社長

これまでに約2,000件のオフィスプランニング、デザインを手掛ける。
現在、FMコンサルティングやインテリアプランニング&デザイン、家具デザインなど幅広く活躍中。

著書に「オフィスインテリアのプランニング&デザイン」(共著・KBI出版)「3Dオフィスデザイナー快適オフィスの作り方」(共著・アスキー)がある。


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