インテリアを学ぶPractice

プロから学ぶ極意インテリアデザインにおけるヴァーチャルリアリティ

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Let’s learn the interior.

東京都市大学 都市生活学部
インテリアプランニング研究室 教授
河村 容治

新たな可能性の開拓

私の研究室では、カラーコーディネートや照明計画など一般的なインテリアに関する研究と並行して、新しい技術のインテリアデザインへの応用についても研究しています。
例えば、立体視(ステレオグラム)、3Dプリンター、プロジェクションマッピングなどです。
これらの研究は、研究室に所属する学生の卒業研究テーマとして受け継がれています。展示会や学園祭など機会があるごとに成果を発表し、実際に来場者に体験してもらい、好評を博しています。またそこで得た知見を研究にフィードバックしています。
最近では村野藤吾展(※1)で行った「村野建築を仮想空間で体験」とういワークショップをきっかけに研究室の中に「没入班」ができ、バーチャルリアリティ周辺の研究に力を入れています。

バーチャルリアリティの現状

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バーチャルリアリティ(以後VR)とは、コンピュータによって体験者の周囲に仮想的な世界を作り出すシステムで、体験者にその世界にいるという没入感を与えることや体験者の動きに伴って仮想世界が変化するものです(a)。この技術には今まで大掛かりな装置が必要で、簡単に手が出せない研究領域でした。
しかし、ゲーム用に開発されたOculus Rift(※2)のVRゴーグル(ヘッドマウンテンディスプレイ)の出現で、身近なものになりつつあります。ソニーは次期ゲーム機としてVRを利用したPlayStationVRを2016年に発売すると予告しています。(※3)
にわかにVR時代の幕開けの予感がします。

VRアイテムの連携と検証

ワークショップ風景 右手前がOculusVR、左奥がハコスコの展示

ワークショップ風景
右手前がOculusVR、左奥がハコスコの展示

村野藤吾展では、THETA(※4)で撮影した村野藤吾が設計した建築の模型写真をVRゴーグルに表示しました。
体の動きに画像が追従するので、模型の中に入ったような没入感が体験できます。中庭やインテリアのように囲まれた空間がより効果的であることがわかりました。
通常の模型展示では鳥瞰的な視点になりますが、撮影時にTHETAのレンズの位置を人の目の高さに調整したので、実際の建築の中にいるように模型を観察できました。
ゴーグルを通して自由に見回しながら模型写真を見ると、直接模型を見る時よりも細かい部分にまで目が行き届き、模型をより詳しく観察できることもわかりました。 また、全天球カメラで撮影した京都宝ヶ池プリンスホテルの実写と比較して、その模型が驚くほど正確に再現されていることもわかりました。

  • THETAで撮影した村野藤吾設計の建築物の模型写真

    THETAで撮影した模型写真

  • THETAで撮影した京都宝ヶ池プリンスホテルの実写

    THETAで撮影した実物の写真

  • 模型の正確さを実写と比較

    模型の正確さを実写と比較

CADからVRゴーグルへ

THETAで撮った映像を写すことは比較的簡単にできましたが、CADデータのOculus Riftへのデータ変換には手こずりました。
ArchiCADのデータをCINEMA4DからUnityに読み込み、Oculus Riftでようやく見ることができました(c)。
その後Oculus RiftがDK2にアップグレードして、画質がよくなり、3D酔いはかなり改善されましたが、CADからのデータ変換方法は、一からやり直しでかなり苦戦しています。ところが3DデータのOculus Riftへの変換ソフトの発売が発表され(※6)、インテリアのプレゼンにもっと気楽にVRが利用できる環境が整いつつあります。

データの連携

プレゼンテーションツールとしての可能性

インテリアのプレゼン法といえば、図面・イラスト・パースなどの2D表示とアニメーションやウォークスルーをPC画面で見せる3D表示が一般的です。
従来のプレゼン方法とVRを比較すると、従来のものはウォークスルーを除き、制作者の視点で作られており、プレゼン時に見る側の意思は反映されません。
ウォークスルーでは見る人の意思で、見たいルートを希望するタイミングでみることができます。
さらにVRになれば、視点を自由に移動することができ、より確かな臨場感も味わうことができるようになります。
そして同じシステム環境で、実写・模型写真・CAD/CG画像などを詳細に見せることもできるのです。

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例えばマンション・リフォームでは、スタディ模型の中に入る、現況と進行中の案の比較、異なる案の検討などをよりリアルに行えるようになるでしょう。
住宅展示場では、展示していない別のタイプの製品もVRで体験することができます。
ショールームでは、選んだインテリアエレメントが部屋のなかでどう見えるかすぐ体験でき、また別の製品に取り替えることも容易です。
公共施設などでの計画では、サインがどのように利用者に見えるかの確認が可能です。
いまのところVRの利用はゲームや展示会などに限られていますが、インテリアの現場でも今後はもっと気軽にデザインやプレゼンテーションに応用される時代がすぐそこまで来ているのです。

VRのアイテムと注釈

全天球カメラ(THETA)

1.全天球カメラ(THETA)

本体の前後に着いた魚眼レンズで周囲360°一気に撮影できるカメラです。人が本体のシャッターを押すと撮影者自身も写ってしまいますが専用ソフトをインストールしたスマートフォンで遠隔操作ができます。THETAは興味深いカメラですが、最初何のために利用したらよいかわかりませんでした。いろいろな対象を条件を変えて撮影し、表示方法も工夫しました。通常の写真と異なり、地面を這う虫が大きく現れるなど予期せぬ情景が写り驚くこともありました。アニメーションに編集すると体験したことのない新鮮な世界が出現します。

Oculus Rift DK2

2.Oculus Rift

Oculus Riftの発売時、どの程度のことができるのか未知数でしたが、イチかバチかで個人輸入してみました。 そのゴーグルをつけ、サンプル映像を見て驚きました。映像が体の動きに追従するだけでなく3D表示(立体視)もできていて、没入感は十分でした。 その結果、いろいろな可能性を思い浮かべることができました。体の向きはゴーグルが感知し、前後の動きは、キーボード操作により実現します。 最新のDK2では、赤外線センサーが搭載され、前後左右の動きに対応できるようになりました。 Oculus Riftの製品版「Rift」は、2016年上四半期(1~3月)に発売となることが正式発表されました。開発者版より軽く小さくなり、着脱可能なヘッドフォンが付属し、コントローラーとしてMicrosoftのXbox Oneの無線コントローラーが同梱されます。

ハコスコ

3.ハコスコ

ハコスコは、ダンボールとプラスチックレンズからなるキットを組み立てて作る安価なVRゴーグルです。専用アプリをダウンロードしたスマートフォンをハコスコ本体にはめ込んで使います。見る人の動きに連動して、360°の画像を見ることができ、比較的簡単に自分のスマートフォンでVRの疑似体験ができます。THETAで撮った写真をハコスコでみることもできます。 インテリアパースの表示にハコスコを利用するとより見応えがあるプレゼンができるので、個人利用だけでなく、企業にも関心が寄せられています。メガソフトの3Dデザイナーシリーズのデータをハコスコで見られるデータに変換するサービスも始まっています。

注釈

  1. ※1 目黒区美術館「村野藤吾の建築 模型が語る豊穣な世界」展 2015年
        ワークショップ担当:藤﨑俊輔、日川正恵、新井夏実
  2. ※2 DK2 https://www.oculus.com/en-us/dk2/ 2014年7月発売 開発者用キット2
      (※DK1は2013年4月発売)
  3. ※3 sony Play Station VR http://www.jp.playstation.com/psvr/ (2016年上期発売予定)
  4. ※4 RICOH THETA  http://theta360.com/ja/ (2013年11月8日発売)静止画のみ撮影可能。
        2014年11月 二代目発売。動画撮影が可能に
        2015年10月 RICOH THETA S(上位モデル)発売
  5. ※5 ハコスコ http://hacosco.com
        iPhone向けのダンボール製VRデバイスとして2014年7月1日発売
  6. ※6 メガソフト社は3DマイホームデザイナーPROシリーズに対し、Oculus Riftへのデータ変換ソフト(HMD拡張キット)を発売予定している。2015年11月に東京ビッグサイトで開催されたHOSPEX(病院・福祉機器開発テクノロジー展 他)にて、同社はITS社と共同でVR内装体験のデモを公開した。http://www.megasoft.co.jp/3d/hmd/index.html

参考文献

  1. a 館暲他監修 日本バーチャルリアリティ学会編「バーチャルリアリティ学」
      コロナ社 2011年
  2. b 杉山玲奈「パノラマアニメーションの可能性について」
      2014年度東京都市大学都市生活学部卒業研究
  3. c 山口智之「没入型VRシステムを用いた計画立案への応用について」
      2014年度東京都市大学都市生活学部卒業研究
東京都市大学ロゴ 東京都市大学 都市生活学部
都市生活学科 河村 容治

公開日:2015年10月11日